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倒産手続における債権の取扱いの比較|破産・民事再生・会社更生の相違を解説

公開 2026年8月22日更新 2026年9月30日

倒産手続における債権の分類

倒産手続におきましては、債権の性質により弁済の順位が大きく異なります。同じ金額の債権であっても、分類が異なれば回収額は全く異なる結果となります。

本記事では、破産、民事再生及び会社更生の各手続における債権の取扱いを対照して整理いたします。

手続別の債権の呼称と順位

性質 破産手続 民事再生手続 会社更生手続
担保権 別除権(手続外で行使) 別除権(手続外で行使) 更生担保権(手続内)
手続費用・開始後の債権 財団債権 共益債権 共益債権
一般の先取特権のある債権 優先的破産債権 一般優先債権(随時弁済) 更生債権(優先順位あり)
租税債権 財団債権又は優先的破産債権 一般優先債権(随時弁済) 更生債権(手続内)
労働債権 財団債権又は優先的破産債権 一般優先債権(随時弁済) 共益債権又は更生債権
一般の取引債権 破産債権 再生債権 更生債権
開始後の利息・遅延損害金 劣後的破産債権 開始後債権 更生債権(劣後)
株主の権利 残余財産の分配 原則として変更されない 更生計画により変更可能

とりわけ重要な相違点

第一 租税債権及び労働債権

民事再生手続におきましては、租税債権及び労働債権は一般優先債権として、再生手続によらないで随時弁済されます(民事再生法第122条第2項)。すなわち全額の支払を要します。

これに対し会社更生手続におきましては、租税債権も手続に取り込まれ、更生計画による権利変更の対象となります。租税債権が多額である事案において会社更生が選択される理由です。

第二 担保権

破産及び民事再生におきましては、担保権者は別除権者として手続外で担保権を実行できます。会社更生におきましては更生担保権として手続に取り込まれ、実行が禁止されます(会社更生法第50条第1項)。

詳細は別除権の解説をご覧ください。

第三 株主の権利

民事再生手続におきましては、株主の権利は原則として変更されません。会社更生手続におきましては、債務超過の場合に株主が権利を失うのが通例です。

財団債権・共益債権となる主なもの

第一に、手続の費用(破産法第148条第1項第1号)。

第二に、破産手続開始前3か月間の給料(破産法第149条第1項)。

第三に、退職前3か月間の給料に相当する退職手当(破産法第149条第2項)。

第四に、破産管財人が履行を選択した双務契約に基づく相手方の請求権(破産法第148条第1項第7号)。詳細は双方未履行双務契約の解除の解説をご覧ください。

第五に、手続開始後の事業の継続に必要な取引に基づく債権(民事再生法第119条第2号、第120条)。

お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。

債権者としての実務対応

第一に、自らの債権がどの分類に属するかを確定いたします。分類により回収の見込みが大きく異なります。

第二に、担保権又は先取特権の有無を確認いたします。動産売買の先取特権は無担保取引でも成立する場合があります。

第三に、相殺の可否を検討いたします。相殺は事実上の優先弁済となりますが、禁止される場合があります(破産法第71条、第72条)。

第四に、手続開始後の取引につきましては、共益債権又は財団債権となりますので、条件を確認したうえで継続の可否を判断いたします。

よくあるご質問

質問1 同じ取引先でも債権により順位が違うことはありますか。
あります。手続開始前の売掛金は破産債権、開始後の納品に係る売掛金は財団債権となります。

質問2 保証金及び敷金はどう扱われますか。
賃貸人が倒産した場合の敷金返還請求権につきましては、破産法第148条第1項第8号及び民事再生法第92条第3項に特則があります。

質問3 手形債権は有利ですか。
手形債権であることによる優先はありません。ただし手形の取立委任を受けた銀行の商事留置権が問題となる場合があります。

まとめ

倒産手続における債権の取扱いは、手続の種類と債権の性質の組合せにより決まります。とりわけ租税債権及び担保権の取扱いの相違は、債務者にとっての手続選択と債権者にとっての回収見込みの双方を左右いたします。

取引先の倒産に直面された場合には、まず自らの債権の分類を確定することから始めてください。

本記事の根拠条文

破産法第71条、第72条、第98条、第99条、第148条、第149条。民事再生法第92条第3項、第119条、第120条、第122条。会社更生法第50条第1項、第127条以下。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、2024年(令和6年)10月には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ました。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めています。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継、企業法務及び不動産に関する法律問題

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本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。

著書

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『非上場会社における少数株主対策の手法と実務』(日本法令)
中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策
『中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策』(清文社)
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