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双方未履行双務契約の解除とは
双方未履行双務契約とは、双務契約について、債務者及びその相手方が倒産手続開始の時において共にまだその履行を完了していない契約をいいます。
破産法は、このような契約につき、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができると定めております(破産法第53条第1項)。解除するか履行するかを選択する権利が破産管財人に与えられているのです。
民事再生手続におきましては再生債務者等が(民事再生法第49条第1項)、会社更生手続におきましては管財人が(会社更生法第61条第1項)、同様の選択権を有します。
選択権が認められる理由
双務契約におきましては、双方の債務が対価関係に立ちます。債務者が破産した場合、相手方に履行を強制しながら債務者の側は配当しかしないというのでは相手方に酷です。他方、契約を一律に存続させますと、破産財団にとって不利益な契約に拘束されることになります。
そこで法は、破産財団にとって有利であれば履行を選択し、不利であれば解除を選択することを認め、あわせて相手方の地位を保護する規定を置いております。
相手方の保護
催告権
相手方は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができます。破産管財人がその期間内に確答をしないときは、契約の解除をしたものとみなされます(破産法第53条第2項)。
選択権の行使が遅れることによる相手方の不安定な地位を解消するための制度です。
解除された場合の相手方の権利
破産管財人が解除を選択した場合、相手方は、損害の賠償について破産債権者としてその権利を行使することができます(破産法第54条第1項)。すなわち配当を受けるにとどまります。
他方、相手方が既に給付をしていた場合、その反対給付が破産財団中に現存するときは取戻権を行使することができ、現存しないときはその価額について財団債権者として権利を行使することができます(破産法第54条第2項)。財団債権は破産債権に優先して随時弁済されますので、相手方にとって有利です。
履行が選択された場合
破産管財人が履行を選択した場合、相手方の有する請求権は財団債権となります(破産法第148条第1項第7号)。相手方は全額の弁済を受けることができます。
賃貸借契約の特則
賃借人について破産手続が開始した場合、賃貸借契約は双方未履行双務契約に当たりますので、原則として破産管財人が解除を選択できます。
他方、賃貸人について破産手続が開始した場合には、賃借人が対抗要件を備えているときは、破産管財人は解除をすることができません(破産法第56条第1項)。賃借人の地位を保護する趣旨です。この場合、賃借人の有する請求権は財団債権となります(同条第2項)。
民事再生手続及び会社更生手続におきましても同様の規定があります(民事再生法第51条、会社更生法第63条)。
実務上問題となる契約の類型
継続的売買契約
納品と代金の支払が反復される取引におきまして、どの範囲を一個の契約と捉えるかにより結論が異なります。個別の売買ごとに判断するのが通例です。
ファイナンス・リース契約
ファイナンス・リースは実質的に金融ですため、双方未履行双務契約に当たらず、リース料債権は破産債権となるものと解されております。
請負契約
注文者が破産した場合、請負人又は破産管財人は契約の解除をすることができます(民法第642条第1項)。ただし仕事の完成後は解除できません。
ライセンス契約
ライセンサーが破産した場合、ライセンシーの地位が不安定となることが問題とされてまいりました。特許法第99条の当然対抗制度により、通常実施権は登録なくして対抗できることとなっております。
雇用契約
雇用契約も双方未履行双務契約に当たりますが、労働法上の解雇規制との関係が問題となります。実務上は、破産管財人が解雇を行うことが通例です。
債権者としての実務対応
取引先について倒産手続が開始した場合、第一に、契約が双方未履行の状態にあるかを確認いたします。第二に、自らの給付が現存しているかを確認いたします。取戻権と財団債権のいずれになるかで回収額が大きく異なります。第三に、催告により選択を促し、地位の安定を図ります。第四に、所有権留保又は動産売買の先取特権による優先回収の可否を検討いたします。
よくあるご質問
質問1 倒産解除特約は有効ですか。
倒産手続の開始を解除事由とする特約につきましては、会社更生手続に関し判例が効力を否定しており、民事再生手続におきましても同様に解されております。倒産手続の趣旨を没却するためです。
質問2 管財人が履行を選択した後に翻意できますか。
いったん選択権を行使した後は、原則として撤回することができません。
質問3 解除された場合の損害賠償はどの範囲で認められますか。
履行利益の賠償が認められると解されておりますが、破産債権として配当を受けるにとどまります。
まとめ
双方未履行双務契約の解除は、倒産手続における契約関係の処理の中核を成す制度です。相手方にとりましては、取戻権、財団債権及び破産債権のいずれの地位に立つかにより回収額が大きく異なりますので、早期の検討が不可欠です。
本記事の根拠条文
破産法第53条、第54条、第56条、第148条第1項第7号。民事再生法第49条、第51条。会社更生法第61条、第63条。民法第642条第1項。特許法第99条。
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