この記事の位置付け
本ページは、会社の倒産手続の選択と資金繰りの局面に関する解説のうちの一つです。全体像は、次の中核となるページをご覧ください。
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債務免除益課税とは
債務免除益課税とは、債務の免除を受けたことにより生ずる利益(債務免除益)に対して法人税等が課される問題をいいます。
事業再生の局面におきましては、金融機関から債権放棄を受けることにより過剰債務を解消いたします。ところが、税務上、債務の免除を受けた金額は益金に算入されます(法人税法第22条第2項)。せっかく債務を減らしたにもかかわらず多額の法人税が課されるのでは、再生の意義が失われかねません。
この問題を回避するための制度が、法人税法第59条の期限切れ欠損金の損金算入です。
期限切れ欠損金とは
青色欠損金は、一定の期間に限り繰越控除が認められております。この期間を経過して切り捨てられた欠損金を、実務上期限切れ欠損金と申します。
期限切れ欠損金は通常の所得計算では使用できませんが、一定の場合に限り損金に算入することが認められております。これにより債務免除益と相殺し、課税を回避することができます。
期限切れ欠損金の損金算入が認められる場合
第一 会社更生等の場合(法人税法第59条第1項)
更生手続開始の決定があった場合において、債務の免除を受けたとき等は、期限切れ欠損金を損金に算入することができます。この場合、期限切れ欠損金を青色欠損金より先に使用することができる点が特徴です。
第二 民事再生等の場合(法人税法第59条第2項)
再生手続開始の決定があったこと等の事実が生じた場合において、資産の評定を行いその評価損益を計上したときは、期限切れ欠損金を損金に算入することができます。この場合も期限切れ欠損金を先に使用いたします。
第三 資産の評定を行わない場合(法人税法第59条第3項)
民事再生等において資産の評定を行わない場合にも、期限切れ欠損金の損金算入が認められますが、青色欠損金を先に使用することとなりますので、控除できる金額が減少いたします。
第四 解散の場合(法人税法第59条第4項)
解散した法人につき残余財産がないと見込まれるときは、期限切れ欠損金を損金に算入することができます。
私的整理における取扱い
法的整理のみならず、一定の要件を満たす私的整理におきましても、資産の評定を行っている場合には期限切れ欠損金の損金算入が認められます。
要件は法人税法施行令に定められておりまして、おおむね、第一に、一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って再生計画が策定されていること、第二に、公正かつ適正な資産評定が行われていること、第三に、当該資産評定に基づく貸借対照表が作成されていること、第四に、これに基づいて債務免除等の額が定められていること、第五に、二以上の金融機関等が債務免除等をすることが定められていることです。
中小企業活性化協議会による再生支援、中小企業の事業再生等に関するガイドラインによる手続及び事業再生ADRは、いずれもこの準則に該当するものとして運用されております。私的整理の手続選択が税務上の帰結を左右するということです。
実務上の留意点
第一に、債務免除の時期です。事業年度をまたぐ場合、免除益と損金算入の時期が一致しないと課税が生じます。
第二に、資産の評定の要否です。評定を行うか否かで青色欠損金と期限切れ欠損金の使用順序が異なり、控除額に差が生じます。
第三に、第二会社方式との比較です。第二会社方式では、旧会社を清算する際に法人税法第59条第4項の適用を検討いたします。
第四に、個人事業主の場合です。所得税におきましても、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合には、債務免除益を各種所得の金額の計算上収入金額に算入しない旨の規定があります(所得税法第44条の2)。
債務免除益課税は税理士の職域です。当事務所は法的整理及び私的整理の手続の選択につき助言いたしますが、具体的な税額の計算及び申告につきましては税理士にお問い合わせください。
よくあるご質問
質問1 債権放棄を受けても税金がかからないことがあるのですか。
期限切れ欠損金の損金算入により債務免除益と相殺できる場合には、課税が生じないことがあります。ただし要件の充足が前提です。
質問2 どの手続を選べば有利ですか。
一般に、資産の評定を行う法的整理又は準則型私的整理が有利です。純粋な相対交渉による債権放棄では期限切れ欠損金を使用できない場合があります。
質問3 債権者の側の税務はどうなりますか。
債権放棄が寄附金と認定されますと損金算入が制限されます。準則型私的整理による場合には、合理的な再建計画に基づくものとして損金算入が認められるのが通例です。
まとめ
債務免除益課税は、事業再生における手続選択を左右する重要な論点です。準則に従った手続を選択し、資産の評定を適切に行うことにより、課税を回避しつつ過剰債務を解消することが可能となります。
本記事の根拠条文
法人税法第22条第2項、第59条。法人税法施行令第24条の2、第117条の2ほか。所得税法第44条の2。
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