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本ページは、法人破産の申立て及び破産手続に関する解説のうちの一つです。全体像は、次の中核となるページをご覧ください。
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支払不能とは
支払不能とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます(破産法第2条第11項)。
支払不能は、破産手続開始の原因です。債務者が支払不能にあるときは、裁判所は破産手続開始の決定をいたします(破産法第15条第1項)。法人につきましては、支払不能のほか債務超過も破産手続開始の原因となります(破産法第16条第1項)。
支払不能の四つの要素
第一 支払能力の欠如
支払能力とは、財産、信用及び労務によって弁済する能力をいいます。資産が債務を下回っていても、金融機関からの借入れが可能である場合、又は親会社からの支援が確実である場合には、支払能力を欠くとはいえません。逆に、帳簿上は資産超過であっても、資産が直ちに換価できないものばかりであり、追加の借入れも見込めない場合には、支払能力を欠くと評価されます。
第二 弁済期にある債務であること
将来到来する債務は考慮されません。現に弁済期が到来している債務を弁済できるかどうかが基準です。
第三 一般的であること
特定の債権者に対してのみ弁済できない状態は含まれません。債務全般について弁済できない状態を要します。
第四 継続的であること
一時的な資金の不足は含まれません。近い将来において資金繰りが改善する見込みがない状態を要します。
支払不能の時点が持つ意味
支払不能は、破産手続開始の原因であるにとどまらず、否認権及び相殺禁止の基準時としても極めて重要です。
偏頗行為の否認
債務者が支払不能になった後にした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為は、債権者が支払不能であったことを知っていた場合には否認することができます(破産法第162条第1項第1号イ)。
すなわち、支払不能となった時点を境として、それ以後の特定の債権者に対する弁済は、破産管財人により覆される可能性が生じます。
非義務的偏頗行為の否認
債務者の義務に属しない行為又は方法若しくは時期が債務者の義務に属しない行為につきましては、支払不能になる前30日以内にされたものも否認の対象となります(破産法第162条第1項第2号)。
相殺の禁止
破産債権者は、支払不能になった後に契約により負担する債務を専ら破産債権をもってする相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約をした場合等には、相殺をすることができません(破産法第71条第1項第2号)。
支払停止との関係
支払停止は、債務者が支払不能であることを外部に表示する行為です。支払停止があったときは、支払不能にあったものと推定されます(破産法第15条第2項)。
すなわち、支払不能は客観的な状態であり、支払停止はその外部への表示行為です。両者は概念として区別されます。詳細は支払停止の解説をご覧ください。
債務超過との関係
債務超過とは、債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいいます(破産法第16条第1項)。貸借対照表上の問題です。
これに対し支払不能は、資金繰り(キャッシュ・フロー)上の問題です。債務超過であっても資金繰りが回っていれば支払不能ではなく、資産超過であっても資金繰りが行き詰まれば支払不能となります。
| 項目 | 支払不能 | 債務超過 |
|---|---|---|
| 着眼点 | 資金繰り | 財産と債務の対比 |
| 根拠条文 | 破産法第2条第11項 | 破産法第16条第1項 |
| 適用される債務者 | 個人及び法人 | 法人(存立中の合名会社・合資会社を除く) |
| 否認の基準時 | 基準時となる | 直接の基準時ではない |
経営者としての実務上の注意
支払不能に陥った後に、特定の取引先又は親族に対してのみ弁済を行いますと、後に破産手続が開始された場合に否認の対象となり、受領した相手方が返還を求められることになります。取引関係の維持を意図した弁済が、かえって相手方に迷惑を及ぼす結果となりかねません。
また、支払不能の状態にありながら新たに商品の仕入れを行い、又は借入れを行った場合には、詐欺罪又は詐欺破産罪(破産法第265条)の問題が生じ得ます。
資金繰りに行き詰まりを感じられた段階で、弁済の可否を含めて弁護士にご相談いただくことが、結果として関係者の損失を最小化いたします。
よくあるご質問
質問1 支払不能かどうかは誰が判断するのですか。
最終的には裁判所が判断いたします。実務上は、資金繰り表により、今後の一定期間において弁済期の到来する債務を弁済できるかを検討いたします。
質問2 支払不能になっても事業を続けられますか。
民事再生手続を利用する場合、支払不能のおそれがある段階で申立てをすることができ(民事再生法第21条第1項)、事業を継続しながら再建を図ることが可能です。むしろ支払不能に至る前の申立てが望ましくあります。
質問3 支払不能の時期が争われるのはなぜですか。
否認権の成否を左右するためです。破産管財人は支払不能の時期を早く主張し、弁済を受けた債権者は遅く主張するという対立構造となります。
まとめ
支払不能は、破産手続開始の原因であり、かつ否認権及び相殺禁止の基準時です。単なる資金不足とは異なり、支払能力の欠如、弁済期の到来、一般性及び継続性の四つの要素により判断されます。
支払不能の時点をいつと見るかは、後の法律関係を大きく左右いたしますので、資金繰りに不安が生じた段階での早期のご相談をお勧めいたします。
本記事の根拠条文
破産法第2条第11項、第15条、第16条第1項、第71条第1項第2号、第162条第1項、第265条。民事再生法第21条第1項。
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