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債権者破産とは?申立ての目的、要件及び実務上の障害

公開 2026年8月22日更新 2026年10月6日

債権者破産とは

債権者破産とは、債権者が申立人となって債務者の破産手続開始を申し立てることをいいます。債権者申立てによる破産とも申します。

破産手続開始の申立ては、債権者又は債務者がすることができます(破産法第18条第1項)。債務者自らが申し立てる自己破産に対し、債権者が申し立てるものが債権者破産です。

自己破産との相違

項目 自己破産 債権者破産
申立人 債務者 債権者
疎明の対象 破産手続開始の原因 債権の存在及び破産手続開始の原因(破産法第18条第2項)
債務者の審尋 行われる 必ず行われる(破産法第30条第1項)
予納金 債務者が納付 申立人である債権者が納付
資料の入手 債務者が保有 限られた資料で疎明を要する

債権者破産におきましては、申立人が債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければなりません(破産法第18条第2項)。債務者の内部資料を有しない債権者にとって、これは相当の負担です。

債権者破産を申し立てる目的

第一 否認権の行使による財産の回復

最も実質的な目的です。債務者が特定の債権者にのみ弁済し、又は資産を親族若しくは関係会社へ移転している場合、破産管財人による否認権の行使(破産法第160条以下)により財産を取り戻すことができます。

債権者が単独で詐害行為取消権を行使するよりも、破産管財人による否認権の行使の方が要件が緩やかであり、かつ実効性が高い場合があります。

第二 財産及び帳簿の調査

破産管財人には強力な調査権限が与えられております。債務者の説明義務(破産法第40条第1項)、重要財産開示義務(同法第41条)及び帳簿の閲覧により、隠匿財産が発見されることがあります。

第三 役員に対する責任追及

破産管財人は、役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の申立てをすることができます(破産法第177条第1項)。

第四 債務者に対する圧力

申立て自体が債務者に対する強い圧力となり、任意の弁済又は和解を促すことがあります。もっとも、債権回収の手段としてのみ申し立てることは、申立権の濫用として却下されるおそれがありますので、慎重な検討を要します。

実務上の障害

第一に、予納金の負担です。管財事件の予納金は、法人の事案では数十万円から、規模により百万円以上となることもあります。申立人である債権者が納付いたしますが、配当により回収できる保証はありません。

第二に、疎明資料の不足です。決算書、資産の状況及び他の債権者への支払状況といった資料を債権者が入手することは容易ではありません。手形の不渡り、銀行取引停止処分、他の債権者の存在及び強制執行の不奏功が疎明の手がかりとなります。

第三に、債務者の抵抗です。債務者は審尋において破産手続開始の原因を争うのが通例です。

お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。

申立てを検討すべき場面

第一に、債務者が資産を隠匿又は移転している疑いがあるとき。

第二に、他の債権者にのみ偏った弁済がされているとき。

第三に、詐害的な会社分割又は事業譲渡が行われたとき。

第四に、債務者が放置されており、清算も破産もされないまま資産が散逸しつつあるとき。

いずれも、回収額そのものよりも財産の保全と真相の解明に主眼がある場合です。

よくあるご質問

質問1 少額の債権でも申し立てられますか。
債権額に法律上の下限はありません。もっとも、予納金の負担との均衡から、実務上は一定額以上の債権を有する場合に検討されます。

質問2 申し立てれば必ず開始決定が出ますか。
そのようなことはありません。破産手続開始の原因が疎明されない場合、又は申立てが不当な目的でされた場合には棄却されます(破産法第30条第1項第2号)。

質問3 予納金は戻ってきますか。
財団が形成された場合には財団債権として優先的に償還されます。財団が形成されない場合には戻りません。

まとめ

債権者破産は、債権者にとって負担の大きい手続ですが、否認権及び役員責任追及という強力な手段を利用できる点に固有の価値があります。資産の隠匿又は偏った弁済が疑われる事案におきましては、有力な選択肢となります。

本記事の根拠条文

破産法第18条、第30条第1項、第40条第1項、第41条、第160条、第177条第1項。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、2024年(令和6年)10月には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ました。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めています。

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本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。

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