法人破産ができないケースとは?破産手続き開始の要件と破産できない場合の対処法

業績の悪化などにより事業の継続が困難なとき、最終的な解決方法として検討されるのが「法人破産」です。破産手続をおこなうと経営している会社は消滅しますが、債務は免責されます。

破産手続きなどは、弁護士へ依頼することで債権者からの催告もなくなるため、経営者の方にとってメリットといえるでしょう。しかし、法人破産を行うためには、規定されている条件を満たさなければなりません。

そこで本記事では、法人破産ができないケースや法人破産するための要件、できなかった場合の対処法について解説します。法人破産を検討している企業の経営者様は、ぜひ参考にしてください。

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法人破産できない3つのケース

倒産手続は大きく「清算型」と「再建型」に分けられ、法人破産は清算型に分類されるものです。

倒産手続の分類  利用する手続き
清算型  破産手続・特別清算
再建型  民事再生・会社更生

「清算型」は会社の存続を前提としておらず、保有する財産を換価し、債権者へ分配すると同時に法人格が消滅します。

一方の「再建型」は、会社の保有する財産をできる限り維持したまま、会社の再建を目指すものです。法人格は消滅せず、事業の継続による収益などを債権者に分配していきます。

なお、法人破産は破産開始を裁判所に申立てたあと、財産を清算するために「破産手続」をおこないます。破産手続とは、会社が保有する財産を換価し、債権者へ分配する手続きです。現在の債務を可能な限り清算し、会社の法人格が消滅します。

しかし、以下に該当するときは、法人破産をおこなうことができません。

・破産手続開始の要件を満たしていないとき
・破産障害事由に該当するとき
・そのほかの破産開始手続が認められない事由に該当するとき

上記の3点について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

破産手続開始の要件を満たしていないとき

破産手続には破産法が適用され、法人破産に関しては「破産手続開始の原因」が規定されています(破産法15条、16条)。

破産法では法人が破産手続をするための原因を定めており、支払不能もしくは債務超過のいずれかの状態でなければ、破産手続の開始は認められていません。

破産障害事由に該当するとき

破産手続の際の財産隠しなどをはじめとする破産詐欺的な行為は、債権者に更なる不利益を与える可能性があります。そのため破産法では、破産手続開始の原因を満たしていたとしても、以下に該当する場合は除くとしています。

・ 破産手続の費用の予納がないとき(破産法30条1項1)
・ 不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき(破産法30条1項2)

上記は「破産障害事由」と呼ばれており、いずれかに該当するときは、破産手続の申立が認められません。

弁護士への依頼で発生する費用が支払えないとき

法人破産の手続きを検討するときは、手続きの複雑さから弁護士に依頼するケースがほとんどです。弁護士に依頼する際には、弁護士費用が発生します。

弁護士費用を支払えないと弁護士は手続きを進められないため、法人破産の手続きを依頼するときは、必ず用意しておきましょう。

そのほかの破産開始手続が認められない事由に該当するとき

そのほか、破産手続が認められない事由としては、以下のようなものが挙げられます。

・ 申立権がない者が破産手続開始の申立をした
・ 民事再生法(民事再生法39条1項)、会社更生(会社更生法50条1項)、特別清算(会社法515条1項)の倒産手続をすでに開始していたとき

上記のような事由に該当するときは、破産開始手続の申立が認められません。

法人破産をするためには

法人破産をするためには、いくつか要件を満たさなければなりません。要件は、大きく「形式的な要件」と「実質的な要件」に分けられます。それぞれ詳しくみていきましょう。

破産手続開始の要件を満たすこと

まずは実質的な要件として、破産法第16条の「法人の破産手続開始の原因」の要件を満たすことが必要です。

破産法第16条(法人の破産手続開始の原因)
債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。

破産手続開始の原因には、債務超過と支払不能の2種類が定められています。

債務超過

債務超過とは、会社が抱える負債の総額が総資産を上回っている状態のことです。債務超過は、大きく以下の2つのパターンに分けられます。

・薄価債務超過…貸借対照表などの帳簿上で負債が資産を上回っている状態
・実質債務超過…帳簿上では債務超過でなくても、時価で判断すると債務超過となっている状態

債務超過になる主な原因は、経営の赤字の状態が続いていることです。赤字が続くと企業の純資産が減っていき、帳簿上でも負債が資産を超えてしまいます。帳簿上で負債が資産を超えていると、債務超過の状態と判断されます。

また事業を展開していると売掛金や貸付金が、不良債権となってしまうこともあるでしょう。帳簿上は債務超過の状態でなくても、不良債権など含めて評価した際、債務超過に陥っていると判断される場合もあります。

破産手続をおこなうためには、上記のような債務超過の状態であることが条件です。

支払不能

支払不能の状態であることも、破産手続開始の原因の1つです。破産法は支払不能についても定めており、破産手続では以下のような状態が該当します(破産法第2条11項)。

・支払能力を欠くとみなされる状態
・弁済期にある債務について、一般的かつ継続的に弁済ができない状態
・客観的に見て支払不能の状態

支払能力を欠く状態とは、財産・労務・信用などのいずれをとっても、債務を返済する能力がない状態を指します。ただし、「将来的に支払えなくなることが予想される状態」などは含まれません。

また「一般的かつ継続的に返済できない」とは、継続した弁済ができない状態のことです。一時的に支払えない状態は含まれませんが、一部の債権者へしか返済ができていない状態などは該当します。客観的にみて、これらに該当する状態にあると支払不能と判断されます。

とはいえ、支払不能な状態を外部から客観的に判断するのは容易ではありません。たとえば債権者が申立人の場合、債務者が支払不能な状態にあることを実証するのが、難しいケースも多いでしょう。

そこで破産法では、「支払停止」が発生した場合も、支払不能の状態と推定するとしています(破産法15条2項)。支払停止とは債権者が外部に対して、継続的な支払ができない状態であることを表明する行為です。表明の方法は大きく、「明示的な表明」と「黙示的な表明」に分けられます。

明示的な表明
  •  6ヶ月以内に2回以上の不渡りがあり、金融機関から取引停止処分を受けた
  •  事業所に支払不能の旨の張り紙を掲示した
  • 債権者へ支払不能になった旨を通知した
黙示的な表明
  • 事業所の閉鎖
  • 廃業
  • 債権者の代理人弁護士が、債権者へ支払停止をする旨の通知を送付した

なお、支払停止は債務者の行為を指しますが、支払不能の状態であるかどうかについては、裁判所が債務者の状況を総合的に鑑みて判断します。

破産障害事由に該当しないこと

一方の形式的な要件は、申立て方式の不備や申立権を有した者が申し立てすることなど、手続きを進めるうえでの前提として満たす必要がある条件のことです。形式的な要件には、破産障害事由に該当しないことも含まれます。

破産障害事由に該当するのは、主に「破産手続の費用の予納がない」、「不当な目的または不誠実な申立」の2つです。

法人破産をするときは裁判所に対して、予納金を支払わなくてはなりません。予納金とは手数料や官報広告費など、破産手続に要する費用のことです。予納金の金額は債務者の状況などによって異なり、裁判所が定めます。予納金の納付ができなければ、破産障害事由に該当することになり、破産手続の申立は認められません。

また不当目的・不誠実な申立てとは、以下のような行為のことです。

・計画倒産など債権者を害することを目的とした申立
・財産の隠匿や粉飾決算など不正をおこなったうえでの申立
・債権者が優先的に債権を回収するためにした申立
・労働組合を害することを目的とした申立

上記のような行為に該当するとみなされた場合は、破産手続が認められません。加えて不正をおこなった際は、破産詐欺罪が成立する可能性もあるため注意しましょう。

破産手続以外の倒産手続きを開始していないこと

先述したように、すでにほかの倒産手続きを開始しているときは、破産手続ができません。民事再生・会社更生・特別清算、それぞれ適用される法律にて規定がされています。

民事再生や会社更生は、企業の建て直しを図るための手続きです。債権者への配当も破産手続と比べると多くなる可能性があるため、債権者保護の観点から優先されると考えられています。

適切な方法で破産手続の申立がされていること

破産手続開始の決定を受けるには、適切な方法で申立することが必要です。たとえば申立が認められている者を「申立人」と呼び、範囲が定められています。

申立の種類 特徴
当該法人による破産申立
  • 債務者である法人が破産手続を申立てること
  • 予納金は法人の負担
準債務者による破産申立(破産法19条1項、2項)
  • 理事や代表者が単独でおこなえる申立のこと
  • 予納金は申立人である準債務者が負担
  • 清算人も、破産手続開始の申立てが可能
債権者による破産申立(破産法18条)
  • 法人の債権者が破産手続を申立てること
  • 債権者は破産手続の開始原因があることを疎明する必要がある
  • 予納金は債権者が負担
監督官庁による破産申立(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 第490条)
  • 法人を監督する官庁による申立のこと
  • 明白な法令違反、事業により多くの被害者が出ていたりするなど、特殊な事情があるときに用いられる

法人の破産手続を申立できるのは、上記に該当する者のみです。会社と関係性のない代表者の妻などが、申立人となることはできません。

また取締役会が設置されている会社の場合、破産手続を申し立てるには、取締役会の決議が必要です。決議があったことを証明するため、申立する際には議事録を添付します。

一方で取締役会・理事会が設置されている会社の場合は、取締役・理事全員の同意で申立が可能です。株主総会の決議までは、必要とされていません。

そのほか破産手続の申立時には、破産手続開始の申立書や財産目録など、提出しなければならない書類があります。必要書類を提出しないと破産手続開始の決定は受けられないため、申立する前に準備・収入しておくことが必要です。

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法人破産における手続きの流れ

申立人によって若干の違いはありますが、法人破産の手続きは大まかに以下のような流れで進めていきます。

1.弁護士への依頼・裁判所への申立
2. 裁判所での面談
3.破産手続開始の決定・破産管財人の選任
4.会社が所有する財産の調査・換価
5.債権者集会および債権者への配当
6.破産終結決定・法人格の消滅

弁護士への依頼・裁判所への申立

法人が破産手続をおこなう場合、手続きの複雑さなどから、弁護士に依頼するのがほとんどです。弁護士に依頼したあとは、手続きを委託するための委任契約を締結します。契約を締結させたあとは打ち合わせをおこないますが、このとき受任通知送付についても話し合います。

受任通知とは債務者の代理となる弁護士が、債務整理や破産手続を検討していることを、債権者へ知らせるための通知です。受任通知を送付すると、債権回収の取立てが停止されます。

個人の破産手続の場合、受任通知を送付したあとに、破産手続の申立をおこなうのが一般的です。しかし、法人が破産をおこなうときは混乱が生じるのを防ぐため、当該法人と弁護士が話し合ったうえで、「送付するかどうか」や「送付のタイミング」などを決定します。

また、申立時には以下のような書類が必要です。

申立書類
  • 破産手続申立書
  •  破産申立についての取締役の同意書(または取締役会の議事録)
  • 申立補充書
  • 財産目録
  • 債権者一覧表
  • 労働者一覧表
  • 代表者の陳述書
  • 弁護士への委任状
添付書類
  • 貸借対照表、損益計算書を含む決算書(直近2期分)
  • 帳簿(総勘定元帳、売掛金台帳など)
  • 雇用関係の資料(雇用契約書、賃金台帳など)
  • 法人登記の全部事項証明書
  • 不動産の登記簿謄本
  • 賃貸契約書の写し
  • 法人で契約している自動車の車検証、または登録事項証明書の写し
  • 有価証券、ゴルフ会員権、法人で加入している生命保険の写し
  • 訴訟に関する書類の写し
  • 解約返戻金計算書の写し

弁護士に依頼する際は、依頼する弁護士に書類を提出します。

裁判所での面談

破産手続の申立がおこなわれると、裁判所は破産手続を開始してよいか判断しなければなりません。そのため裁判官が、債務者に対して面談を実施します。面談に裁判官が聴取するのは、以下のような内容です。

・債権者に関する事項
・財産状況と負債額について
・事業内容
・破産を申立した経緯

面談は、基本的に裁判官と債務者の二者でおこなわれます。

破産手続開始の決定・破産管財人の選任

申立書類や面談内容から、手続開始が妥当だと認められると破産手続開始が決定です。手続きの開始と同時に裁判所は破産管財人を選任することになり、選任後は法人の代表者・申立代理人の弁護士・破産管財人で、破産手続の進行や処理について打ち合わせを実施します。

なお、破産管財人は法人が所有する財産の売却などをはじめとする、管財業務を担っています。そのため打ち合わせでは、会社が所有している財産の状況についても、要請があれば情報を提供しなければなりません。

会社が所有する財産の調査・換価

打ち合わせのあとは、破産管財人が会社の所有する財産の調査を実施します。調査対象は主に換価できるものとなり、換価できそうな備品や不動産なども対象です。申立人である会社の代表は調査・換価の手続きに協力しなければならず、破産管財人が追加の情報・書類を求めた際は開示しなければなりません。

また破産申立人である会社に届く郵便物は、すべて一旦破産管財人へ転送されます。破産管財人は郵送物の確認が認められおり、財産隠しなどの不正行為がないかをチェックしたあとに、破産申立人である会社へ渡されます。

なお、破産申立人である会社の財産におけるすべての管理処分権は、管財人に属することになるため、勝手に財産を処分することばできません。

債権者集会および債権者への配当

会社の財産の調査がおわると、裁判所が定めた日に債権者集会が開かれます。債権者集会とは、債権者に対して以下の事項を報告するための集会です。

・会社が破産に至った経緯
・財産や負債の調査結果の報告
・財産の換価状況と配当について

債権者集会は裁判所で開催され、破産管財人が債権者に報告をおこないます。加えて破産申立人である会社の代表者も出席する必要があり、債権者からの質疑応答に対応しなければなりません。会社に財産がある場合は、債権者に対して説明したうえで配当します。

破産終結決定・法人格の消滅

債権者に対する配当をしたあとは、裁判所の破産手続終結決定をもって、破産手続は完了です。会社に配当できる財産がないときは、破産手続廃止決定をもって破産手続が完了します。破産手続が完了すると、申立人である会社の法人格が消滅し債務も免責されます。

なお、会社が破産する際には、その会社の代表者が同時に破産申立をするケースも少なくありません。会社の代表者が破産申立している場合は、会社の破産手続が完了したあとに、会社の代表者に対する免責審尋がおこなわれます。免責審尋のあと、代表者の免責の許可・不許可が決定します。

法人破産のメリット

法人破産のメリットは、主に以下の3つです。

・資金繰りに悩まずに済む
・債権者からの督促がなくなる
・手続きをすれば代表者の保証債務も免責される

資金繰りに悩まずに済む

破産を申立する直前の会社では、資金繰りに悩んでいるケースが多いはずです。当然ながら会社の代表者も、資金繰りに頭を悩ませているでしょう。

破産手続開始が決定され、免責手続きが完了すると抱えていた負債は免除されます。会社の法人格は消滅しますが、資金繰りからは開放されます。

会社の代表者には、経営難や資金繰りを苦に精神疾患を患ったり、最悪の場合だと自殺に追い込まれたりするケースも珍しくありません。破産手続をおこなえば、会社の経営からも開放されるため、精神的な負担を軽減できるというのがメリットといえます。

債権者からの督促がなくなる

致し方ないとはいえ、債権者からの督促に強いストレスを感じている経営者も多いでしょう。弁護士に破産手続を依頼し、受任通知を送付すると、以降の連絡窓口は依頼した弁護士になります。

債権者から債権に関する問い合わせを直接受けることもなくなるため、精神的な負担を減らせるでしょう。もし直接連絡があったとしても、「弁護士に任せている」と伝えることで、必要以上の督促を回避できます。

手続きをすれば代表者の保証債務も免責される

法律上、法人と個人は別格であるため、破産手続をおこなったとしても、取締役や理事が法的な責任を負うことはありません。

一方で代表者が会社の連帯保証人となっているときは、債権者から保証債務の履行を求められます。しかし、倒産をしてしまう会社の代表者の場合、保証債務の履行が難しいケースも多いでしょう。

保証債務の履行が難しいときは、代表者が個人的に破産手続を申し立てることで、保証債務を免責できる可能性があります。個人的な資金繰りから解放されるため、自身の経済状況の再建を図ることもできるでしょう。

法人破産のデメリット

法人破産はメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。

・事業の継続ができない
・代表者も個人的に破産した場合は信用情報に記録が残る

法人破産をおこなうと今後の生活も大きく変化するため、デメリットについてもあらかじめ理解しておきましょう。

事業の継続ができない

破産手続をおこなうと会社が消滅するため、事業の継続はできません。同様のビジネスを展開するにしても、会社の創立から始める必要があります。会社の創立や事業の創業には、業種ごとにそれなりの資金が必要となるでしょう。

一方で再建型である民事再生や会社更生は、会社が消滅しないため、既存の事業を存続させることが可能です。

代表者も個人的に破産した場合は信用情報に記録が残る

会社の連帯保証人となっている代表者が、個人的に自己破産をおこなうと、信用情報に記録が残ります。信用情報とは、過去の金融取引を記録したものです。信用情報機関が管理しており、ローンや融資の申込があった際、金融機関が参照します。

自己破産の記録は、融資やローンの審査にマイナスな影響を与えるとされており、記録が残っている期間は審査の通過が困難です。

明確に公表されているわけではありませんが、自己破産の情報は5~10年間ほど残るとされています。そのため記録が残っている期間中は、融資やクレジットカードの審査の通過が難しいといえるでしょう。

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法人破産ができない場合の対処法

事業の継続が困難な場合に取り得る手段は、法人破産だけではありません。法人破産ができないときは、以下のような対処法を検討してみましょう。

民事再生や会社更生の制度を利用する

法人の場合、従業員を解雇できなかったり、取引先や仕入先などへの影響を考えたりすると、清算型の倒産を選択するのが難しいケースもあるでしょう。そういったときには、民事再生や会社更生など、再建型の倒産手続きがよく利用されています。

民事再生とは、支払不能や債務超過に陥った会社が、裁判所に申立をおこなうことで経営の再建を図るための制度です。会社を維持しつつ、債務を大幅に減額することにより、経営状況の改善を目指していきます。

民事再生は、法人格を消滅させずに債権の減額を目指すため、現在の事業を継続できます。従業員や関係各所への影響も、生産型の倒産手続きと比べて少ないでしょう。

民事再生を利用する際は、債権者の同意と再生計画の作成が必要です。債権者の同意を得られないと、民事再生の手続きを進めることはできません。同意を得られたあとは再生計画に沿って、債務の弁済をおこなっていきます。

ただし民事再生手続きは、無担保債権者の権利を制約するに留まり、再生計画で減額できるのは無担保債権のみです。会社更生と比べると効力はありませんが、迅速に手続きを進められます。

一方の会社更生は民事再生と比べ、強い効力をもつ再建型の倒産手続きです。株主や担保債権者も権利変更の対象となり、担保債権も減額の対象となります。

また会社更生は、経営陣の経営権がなくなることも特徴です。株式会社のみが申立することができ、手続き開始が決定されると経営権や財産の処分権は、選任された管財人へ移行します。

会社更生は効力が強いため、抜本的な債務整理に適した制度ですが、費用が高額になりがちなことがデメリットです。場合によっては、予納金が数千万円になることもあります。

任意整理をおこなう

法人破産手続には、弁護士への依頼料や予納金など、さまざまな費用が発生します。費用が高額なることもあるため、支払いができず、破産という選択ができないケースもあるでしょう。そのようなときは、まず任意整理を検討してみるのもおすすめです。

任意整理とは債権者と交渉をおこない、債務の減額や返済計画の見直しを図る債務整理の手法です。法律で認められた手法ではないため、法的な倒産手続きなどとは区別されます。

任意整理を実施する際は、弁護士に依頼するケースがほとんどです。法律による定めがないため、柔軟に解決方法を模索できます。また利用する要件の定めもなく、手続きも倒産手続きと比べると簡単です。弁護士への依頼料のみとなるため、破産手続と比べて費用も抑えられるでしょう。

一方で法的な効力がない分、債務の大幅な減額が見込めない場合もあります。適した手法は会社によって異なるため、自社の現状に合った手段を講じることが大切です。

まとめ

法人破産の手続きをおこなうには、定められた要件を満たすことに加え、適切な手法で申立する必要があります。また、すでにほかの倒産手続きを進めていると申立が認められず、手続きを進めることができません。法人破産の手続きをスムーズに進めるには、満たすべき要件や手続きの流れなどを理解したうえで申立するのが重要です。

なお、法人破産の手続きは複雑なため、個人では対応が難しいケースがほとんどです。自社のみでの対応が困難なときは、弁護士への依頼を検討しましょう。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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