この記事の位置付け
本ページは、法人破産の申立て及び破産手続に関する解説のうちの一つです。全体像は、次の中核となるページをご覧ください。
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支払停止とは
支払停止とは、債務者が、支払能力を欠くために弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済することができない旨を、明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいいます。
支払停止があったときは、支払不能にあったものと推定されます(破産法第15条第2項)。すなわち、支払停止それ自体が破産手続開始の原因なのではなく、支払不能を推定させる事実です。
支払停止に当たる典型的な行為
第一に、弁護士名義の受任通知の発送です。債務整理を受任した弁護士が債権者に対して発する通知は、支払停止の典型例とされております。
第二に、手形又は小切手の不渡りです。とりわけ6か月以内に2回の不渡りを出して銀行取引停止処分を受けた場合には、支払停止が明白です。
第三に、店舗の閉鎖及び夜逃げです。事業所を閉鎖し、経営者と連絡が取れなくなった場合がこれに当たります。
第四に、債権者集会における弁済不能の表明です。
第五に、破産手続開始の申立てです。申立て自体が支払不能の表示です。
支払停止が有する法律上の効果
支払不能の推定
支払停止があれば支払不能が推定されますので、破産手続開始の申立てをする債権者は、支払不能の状態を個別に立証する必要がなくなります(破産法第15条第2項)。推定ですので、債務者が支払不能でないことを立証すれば覆されます。
否認権の基準時
偏頗行為の否認につきましては、支払不能になった後の行為のほか、支払停止があった後の行為も否認の対象となります(破産法第162条第1項第1号ロ)。受益者が支払停止の事実を知っていたことが要件です。
ただし、支払停止があった時から1年以上前にした行為は否認することができません(破産法第166条)。
相殺の禁止
破産債権者は、支払停止があった後に破産者に対して債務を負担した場合において、その負担の当時、支払停止があったことを知っていたときは、相殺をすることができません(破産法第71条第1項第3号)。
支払不能との相違
| 項目 | 支払不能 | 支払停止 |
|---|---|---|
| 性質 | 客観的な状態 | 外部への表示行為 |
| 根拠条文 | 破産法第2条第11項 | 破産法第15条第2項 |
| 破産手続開始の原因 | 原因そのもの | 原因を推定させる事実 |
| 立証の負担 | 資金繰りの立証を要する | 表示行為の立証で足りる |
支払不能の詳細につきましては、支払不能の解説をご覧ください。
債権者としての実務上の注意
取引先から弁護士名義の受任通知が届いた場合、その後に受領した弁済は否認される可能性があります。また、受任通知の受領後に新たに債務を負担して相殺をいたしましても、その相殺は禁止されます。
したがいまして、受任通知を受領された場合には、第一に、既存の担保及び保証の状況を確認すること、第二に、進行中の取引を停止するか継続するかを判断すること、第三に、相殺の可否を検討することが必要です。判断を誤りますと、いったん回収した金銭を返還しなければならなくなります。
債務者としての実務上の注意
支払停止と評価される行為を行った後は、特定の債権者に対する弁済が否認の対象となります。取引先への配慮からした弁済が、後に相手方に返還義務を生じさせることになりかねません。
受任通知の発送の時期は、事業の継続の可否、従業員の処遇及び仕入先との関係を総合的に考慮して決定すべきものです。通知を発した瞬間から取引は事実上停止いたしますので、発送の時期の判断が事業の帰趨を決します。
よくあるご質問
質問1 一部の債権者にだけ支払えない旨を伝えた場合も支払停止になりますか。
支払停止は、債務全般について弁済できない旨の表示を要します。特定の債権者に対する個別の交渉は、原則として支払停止に当たりません。
質問2 支払停止から何年前までさかのぼって否認されますか。
支払停止があった時より1年以上前にした行為は、原則として否認することができません(破産法第166条)。
質問3 民事再生手続でも支払停止は問題となりますか。
民事再生法にも同様の否認の規定があります(民事再生法第127条の3第1項第1号)。
まとめ
支払停止は、支払不能を外部に表示する行為であり、支払不能の推定、否認権の起算点及び相殺禁止の基準時として機能いたします。債権者にとりましても債務者にとりましても、支払停止の時点は法律関係の分水嶺です。
本記事の根拠条文
破産法第2条第11項、第15条第2項、第71条第1項第3号、第162条第1項第1号ロ、第166条。民事再生法第127条の3第1項第1号。
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