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清算価値保障原則とは?再生計画の弁済率の下限を画する原則

公開 2026年8月22日更新 2026年10月6日

清算価値保障原則とは

清算価値保障原則とは、再生計画又は更生計画による弁済の額が、当該債務者が破産手続により清算された場合に債権者が受けることのできる配当の額を下回ってはならないという原則をいいます。

民事再生法は、再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するときは、裁判所は再生計画不認可の決定をしなければならないと定めております(民事再生法第174条第2項第4号)。この「再生債権者の一般の利益に反する」場合の中核が、清算価値を下回る弁済です。

原則が置かれている理由

再生手続は、債権者の多数決により債権の一部を切り捨てるものです。しかしながら、破産すれば10パーセントの配当を受けられる債権者に対し、再生計画で5パーセントしか弁済しないことは、当該債権者にとって再生手続に付き合う理由がありません。

多数決によっても奪うことのできない最低限の保障として、破産した場合の配当額が下限とされているのです。再生手続は債権者にとって破産よりも有利でなければならないという、制度の根幹を成す原則です。

清算価値の算定方法

算定の順序

第一に、財産評定により処分価額による資産の総額を算出いたします。

第二に、換価に要する費用及び手続費用を控除いたします。

第三に、別除権の対象となる財産につき、担保権者が優先弁済を受ける額を控除いたします。

第四に、財団債権(租税債権、労働債権の一部、手続費用)を控除いたします。

第五に、優先的破産債権を控除いたします。

第六に、残額を一般債権の総額で除して、清算配当率を算出いたします。

算定において争点となりやすい事項

第一に、不動産の評価です。処分価額を低く見積もれば清算価値が下がり、再生計画の弁済率を低く設定できますので、債権者から厳しく検証されます。

第二に、否認権の行使による回収見込額です。破産した場合には破産管財人が否認権を行使して財産を回復し得ますので、その見込額を清算価値に加算すべきかが問題となります。

第三に、役員に対する損害賠償請求権です。破産管財人による責任追及により回収が見込まれる場合には、同様に加算が問題となります。

第四に、租税債権の額です。財団債権となる範囲により一般債権への配当原資が大きく変動いたします。

実務上の運用

再生計画案の作成に当たりましては、清算価値と再生計画による弁済総額とを対比した清算価値保障原則の充足に関する説明書を作成し、裁判所及び債権者に提示いたします。

実務上、再生計画による弁済率は清算配当率を相当程度上回るように設計されることが通例です。清算価値をわずかに上回る程度では、債権者の賛成を得ることが困難であるためです。

会社更生手続における取扱い

会社更生手続におきましても、更生計画が更生債権者等の一般の利益に反しないことが認可の要件とされております(会社更生法第199条第2項)。清算価値保障原則は更生手続にも妥当いたします。

お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。

私的整理における取扱い

私的整理は法的な強制力を伴いませんので、清算価値保障原則が法律上適用されるわけではありません。もっとも、中小企業の事業再生等に関するガイドラインその他の準則型私的整理におきましては、破産手続による配当よりも多い回収を得られる見込みがあることが計画の要件とされております。実質的には同一の原則が妥当いたします。

よくあるご質問

質問1 清算価値が零の場合、弁済しなくてもよいのですか。
理論上は清算価値保障原則には反しません。もっとも、再生計画の可決には債権者の頭数の過半数及び議決権の総額の2分の1以上の同意を要しますので(民事再生法第172条の3第1項)、事実上一定の弁済が必要です。

質問2 清算価値の算定に不服がある債権者はどうすればよいですか。
債権者集会において意見を述べ、再生計画案に反対することができます。また、不認可事由として主張することも可能です。

質問3 清算価値はいつの時点を基準としますか。
再生手続開始の時を基準といたします(民事再生法第124条第1項)。

まとめ

清算価値保障原則は、再生計画の弁済率の下限を画する原則です。その算定の基礎となるのが財産評定ですので、両者は不可分の関係にあります。

財産評定の詳細につきましては、財産評定の解説をご覧ください。

本記事の根拠条文

民事再生法第124条第1項、第172条の3第1項、第174条第2項第4号。会社更生法第199条第2項。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、2024年(令和6年)10月には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ました。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めています。

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本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。

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『中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策』(清文社)
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