自己破産 法人と個人の違い及び申立て前に避けるべき行為

自己破産とは

自己破産とは、債務者自らが申立人となって破産手続開始を申し立てることをいいます(破産法第18条第1項)。

法人の場合、その理事、取締役又は清算人が申し立てることもでき、これを準自己破産と申します(破産法第19条第1項)。準自己破産におきましては、全員が申立人とならない場合には破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければなりません(同条第3項)。

法人の自己破産と個人の自己破産

法人の場合

法人は、破産手続の終結又は廃止により消滅いたします。免責という制度はありません。残った債務は、法人格の消滅により事実上消滅いたします。

もっとも、代表者が個人保証をしている場合には、保証債務は残ります。この点が実務上最大の問題です。

個人の場合

個人につきましては、破産手続とは別に免責手続があります。免責許可の決定が確定したときは、破産債権につきその責任を免れます(破産法第253条第1項)。

破産手続開始の申立てをしたときは、原則として免責許可の申立てをしたものとみなされます(破産法第248条第4項)。

法人の自己破産の実務上の流れ

第一 準備

事業の停止時期、従業員の解雇、賃借物件の明渡し及び資料の保全につき計画いたします。この準備の巧拙が手続全体を左右いたします。

第二 受任通知の発送

弁護士が受任した旨を債権者に通知いたします。この通知は支払停止に当たります。詳細は支払停止の解説をご覧ください。

第三 申立て

債権者一覧表、財産目録、決算書、清算貸借対照表その他の資料を添付して申し立てます。

第四 開始決定及び破産管財人の選任

第五 管財業務への協力

破産者は、破産管財人の請求により、破産に関し必要な説明をしなければなりません(破産法第40条第1項)。

第六 債権者集会

第七 配当及び終結

申立て前に必ず避けるべき行為

第一に、特定の債権者への弁済です。支払不能後の弁済は否認の対象となり、受領した相手方が返還を求められます(破産法第162条第1項)。

第二に、財産の隠匿又は無償の譲渡です。否認の対象となるのみならず、詐欺破産罪(破産法第265条)に問われるおそれがあります。10年以下の拘禁刑又は1,000万円以下の罰金という重い刑罰が定められております。

第三に、返済見込みのない新規の借入れです。

第四に、帳簿書類の廃棄です。業務及び財産の状況に関する帳簿を隠滅し又は偽造した場合も処罰の対象となります(破産法第270条)。

経営者保証の取扱い

法人が破産する場合であっても、代表者が必ず破産しなければならないわけではありません。

経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務の整理により、一定の要件のもとで、破産手続によることなく保証債務の減免を受け、かつ一定の資産を手元に残すことが可能です。早期に事業の再生又は廃業に着手した場合には、インセンティブ資産として残存資産の範囲が広く認められる運用があります。

これは、経営者にとって申立ての時期を早めるべき最大の理由です。

よくあるご質問

質問1 従業員の給料はどうなりますか。
破産手続開始前3か月間の給料は財団債権として優先的に弁済されます(破産法第149条第1項)。財団が不足する場合には、未払賃金立替払制度により独立行政法人労働者健康安全機構から一定額の立替払を受けられます。

質問2 いつ事業を止めればよいですか。
資金が枯渇してからでは、従業員の給料、明渡費用及び予納金を確保できません。費用を確保できるうちに決断することが、結果として関係者の損失を最小化いたします。

質問3 破産すると再び会社を作れませんか。
そのようなことはありません。破産したことは会社設立の障害となりません。

まとめ

自己破産は、事業の終了を伴う手続ですが、債権者に対する公平な分配を実現し、経営者の再起の出発点となる制度です。

準備の巧拙、申立ての時期、及び経営者保証の整理の可否が結果を大きく左右いたしますので、資金繰りに行き詰まりを感じられた段階でご相談いただくことをお勧めいたします。

本記事の根拠条文

破産法第18条第1項、第19条、第40条第1項、第149条第1項、第162条第1項、第248条第4項、第253条第1項、第265条、第270条。経営者保証に関するガイドライン。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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