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繰越欠損金と繰戻し還付とは?事業再生における活用

公開 2026年8月22日更新 2026年10月6日

繰越欠損金とは

繰越欠損金とは、法人の各事業年度に生じた欠損金額のうち、翌事業年度以後に繰り越して所得金額から控除することができるものをいいます。

青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、一定の期間内に開始する各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入いたします(法人税法第57条第1項)。これを青色欠損金の繰越控除と申します。

繰越しの期間と控除の限度

繰越しの期間は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額につき10年です。それ以前に生じたものは9年です。

控除の限度額につきましては、中小法人等以外の法人は、所得の金額の100分の50が上限とされております(法人税法第57条第1項ただし書)。資本金の額が1億円以下の中小法人等につきましては、所得の金額の全額まで控除することができます。

欠損金の繰戻しによる還付

欠損金額が生じた場合、繰り越して将来の所得と相殺するほか、前事業年度に納付した法人税の還付を受ける方法があります。これを欠損金の繰戻しによる還付と申します(法人税法第80条第1項)。

青色申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合において、その事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度に所得があり法人税を納付しているときは、一定の金額の還付を請求することができます。

適用の対象

この制度は、原則として資本金の額が1億円以下の中小企業者等に限り適用されます。

解散等の場合の特例

解散、事業の全部の譲渡、更生手続開始の決定その他これらに準ずる事実が生じた場合には、規模にかかわらず繰戻し還付を請求することができます(法人税法第80条第4項)。事業再生及び廃業の局面において重要な制度です。

事業再生における意義

第一に、資金繰りの改善です。繰戻し還付により納付済みの法人税が還付されますので、直ちに現金が得られます。再生局面において手元資金の確保は死活的です。

第二に、債務免除益との相殺です。債権放棄を受ける場合、青色欠損金及び期限切れ欠損金により債務免除益を相殺いたします。詳細は債務免除益課税の解説をご覧ください。

第三に、組織再編における承継です。合併等により欠損金を引き継ぐことができる場合がありますが、租税回避の防止のため厳格な要件が定められております(法人税法第57条第2項から第4項まで)。

欠損金が使用できなくなる場合

第一に、青色申告の承認の取消しです。帳簿書類の不備又は無申告により承認が取り消されますと、繰越控除ができなくなります。

第二に、期間の経過です。10年を経過した欠損金は期限切れ欠損金となり、通常の所得計算では使用できません。

第三に、特定株主等によって支配された欠損等法人の特例です。休眠会社を買収して欠損金を利用することを防ぐ規定があります(法人税法第57条の2)。

お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。

実務上の留意点

事業再生の局面におきましては、欠損金の残高及び期限を正確に把握することが計画策定の前提となります。債権放棄の金額及び時期は、使用可能な欠損金の範囲を踏まえて設計する必要があります。

また、繰戻し還付の請求には期限がありますので、確定申告書の提出と同時に請求書を提出する必要があります。

税額の計算及び申告は税理士の職域です。当事務所は手続の選択及び債権者との交渉につき助言いたしますが、具体的な税務処理につきましては税理士にお問い合わせください。

よくあるご質問

質問1 繰戻し還付を請求すると税務調査が入りますか。
還付請求に際しては税務署による調査が行われるのが原則です(法人税法第80条第9項)。帳簿書類の整備が前提となります。

質問2 赤字が続いている会社でも繰戻し還付を受けられますか。
前事業年度に法人税を納付していることが要件ですので、連続して欠損である場合には還付を受けられません。

質問3 期限切れ欠損金はまったく使えないのですか。
通常の所得計算では使用できませんが、会社更生、民事再生及び解散の場合には損金算入が認められます(法人税法第59条)。

まとめ

繰越欠損金及びその繰戻し還付は、事業再生における資金繰りと課税の双方に関わる重要な制度です。とりわけ解散又は更生手続開始の場合の繰戻し還付の特例は、規模を問わず利用できますので、廃業及び再生の局面で必ず検討すべきものです。

本記事の根拠条文

法人税法第57条、第57条の2、第59条、第80条。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、2024年(令和6年)10月には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ました。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めています。

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本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。

著書

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『非上場会社における少数株主対策の手法と実務』(日本法令)
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『中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策』(清文社)
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