会社再建とは「経営状況の悪化した会社の建て直しをすること」です。会社再建にはさまざまな方法があり、ケースによって適切な方法が変わってきます。この記事では、弁護士が会社再建の方法及び流れを解説します。
Table of Contents
会社再建の方法及び流れ!
- 会社再建の4つの方法及び流れ
- 会社再建の4つの方法のメリットとデメリット
- 4つの方法で会社再建が難しい場合の対処法
会社再建の基礎知識について順番に見ていきましょう。
会社再建の4つの方法とは
会社再建には4つの方法があります。4つの方法には決まった順番はなく、自社の状況に合った方法を選んで会社再建を目指すことが基本ですが、自力での会社再建ができるのであればその方が好ましいわけであり、法的整理を避けることができるのであればその方が好ましいわけであり、この1→2→3→4の流れで会社再建が可能かどうかを検討した方が良いということになります。
会社再建の4つの方法は次の通りです。
- 自力での会社再建
- 金融支援による会社再建(私的整理)
- スポンサー(第三者)支援による会社再建
- 法的手続きによる会社再建(法的整理)
4つの方法で会社再建が難しい場合は、倒産や廃業などを検討する流れになります。
方法①自力での会社再建
自力で会社を再建する方法とは、会社(自社)の努力によって会社を再生させる方法になります。会社の経営状況悪化が軽微で自社の努力次第で改善できるケースや、長期的な視野で会社の経営状況を改善したい場合に有効です。
たとえば、会社の経営陣の判断で無駄なコストを削減したり、事業のプロセスを見直して機械などの設備に無駄があれば省いたりすることが自力での会社再建にあたります。家計で言うところの、「無駄な出費をなくす」「保険などの各種サービスや契約、出費状況を見直して家計の無駄を削減する」などの会社版だと考えればわかりやすいのではないでしょうか。
コストの削減や無駄な事業や仕事プロセスの削除、契約の見直しなど、自社内の努力によって会社の経営改善をはかるのがこの自力での会社再建という方法なのです。
自力での会社再建のメリット
会社が自助努力で会社再建をするメリットはふたつあります。
- 金銭的な負担が少ない
- 長期的に見て会社の経営状況を改善できる
会社の自助努力で会社再建する方法は何か手続きをしなければならないわけではありません。よって、金銭的な面での負担が無い、もしくは少ないというメリットがあります。手続きが不要なら、その手続きに関する費用負担が発生しないからです。
社内でコストや無駄を見直し、経営悪化の原因になっている部分や経営に今後よくない影響を与えそうな部分を検討の上で改善する方法ですから、費用負担が発生するというわけでもありません。あくまで社内で行う改善のための努力ですから、専門家への報酬や手続き費用などの予算を見る必要のない方法です。
自社の努力で経営状況を改善する方法は、長期的会社の経営状況を改善できるというメリットもあります。
コストの削減をして会社再建を目指しても、即座に会社再建の効果が生まれ、不死鳥のように会社がよみがえることは、ほとんどありません。会社の自助努力を積み重ねていって、やがて会社の経営が良い方向に向かい、経営再建に繋がるのです。
長期的な目で見て会社をより良くしたい場合や、長期的視野で会社の経営状況を改善したいときなどにメリットのある方法になります。
自力での会社再建のデメリット
自力での会社再建のデメリットは以下のふたつです。
- 会社が再建するまで時間がかかる
- 経営悪化の程度によっては自助努力での回復は難しい
会社の経営状況が悪く差し迫った状況だったとします。すぐに何らかの手を打たないと、会社の継続すら危うい状況でした。このような経営危機的な状況では、「では自社の努力で頑張ってみましょう」とはいきません。
たとえば、風邪をひく前に「やや体調が悪い気がする」の段階では、自分の健康管理といった努力で体調悪化を防げるかもしれません。
しかし、風邪をひいてしまい、さらにその風邪が悪化して高熱が出てしまい、肺炎なども併発していたらどうでしょう。自分の健康管理という努力では、早急な治癒は難しいはずです。専門医の診察と処置、適切な治療でなければ回復は難しい状況ではないでしょうか。自力での会社再建も同じです。
また、コストの削減などで会社再建を目指しても、コスト削減などの結果は即座に出るものではありません。字陸での会社の再建は時間がかかるというデメリットがあります。
方法②金融支援による会社再建(私的整理)
金融支援による会社再建は、私的な債権者との話し合いや交渉で債務を整理して会社を建て直す方法です。「私的整理」とも呼ばれます。
私的に会社の債務などを整理する方法だからこそ私的整理。こう考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
金融支援による会社再建(私的整理)のメリット
金融支援による会社再建のメリットはふたつです。
- 周囲に知られず会社再建できる
- 会社の状況や規模に合わせて柔軟に使える
金融支援による会社再建の最大のメリットは周囲に知られることなく会社再建できることです。会社の経営状況や経営規模に合わせて柔軟な対応ができる点もメリットになります。
金融支援による会社再建は、債権者と個別に交渉や話し合いをすることによって負債カットなどの措置を講じます。マイナスが少なくなれば、その分だけ経営状況も上向きになるはずです。
債権者と個別に交渉や話し合いをしても外部的なニュースになるようなことはありません。そのため、私的整理での会社再建は基本的に外部に知られることなくできる会社再建方法になります。
金融支援による会社再建は裁判所などが関与する法的なものでもありません。会社の規模や経営状況に合わせて柔軟に行えるというメリットもあるのです。
金融支援による会社再建(私的整理)のデメリット
金融支援による会社再建のデメリットはふたつです。
- 交渉が大変である
- 法的な拘束力がない
金融支援による会社再建のデメリットは、交渉の難しさです。金融支援を得るためには、債権者と個別に交渉や話し合いをしなければいけません。
快く会社再建に協力してくれる債権者もいれば、協力に難色を示す債権者もいることでしょう。個別の債権者から交渉によって債権への協力や負債のカットなどの同意を取り付けることの難しさに、私的整理のデメリットがあります。
また、私的整理はあくまで私的な交渉や話し合いで会社再建を進める方法です。私的なものですから、法的手続きによる会社再建のように、債権者を法的に拘束できないというデメリットもあります。
方法③スポンサー(第三者)支援による会社再建
スポンサーの支援による会社再建とは、第三者の力を借りて会社の経営を建て直す方法になります。
スポンサー支援による会社再建には、ふたつの方法があります。ひとつは金融機関などから借り入れを行って会社経営の再建をはかる方法。もうひとつはM&Aなどです。前者の方法は金融機関融資などの活用で、後者の方法はM&Aの各種手法を使う方法になります。
スポンサー(第三者)支援による会社再建のメリット
スポンサー(第三者)支援による会社再建のメリットはふたつです。
- 自社に欠けているもの(資金など)を補える
- 第三者のアドバイスを得られる
自社の努力で会社再建が難しいケースでも第三者の支援による会社再建できるというメリットがあります。
たとえば、自社の力や資金状況だけでは会社再建が難しかったとします。第三者である金融機関の協力を得られれば、自社内に資金という余力がなく会社再建できないケースでも、金融機関の協力により会社再建が可能です。また、自社の存続が経営という点で危うい場合も、M&Aを使うことで存続の可能性があります。
スポンサー支援による会社再建のメリットは「自社だけでは会社再建が難しいという状況に使える」「自社内で欠けているもの(資金など)があっても会社再建できること」なのです。
また、第三者支援による会社再建は、第三者からアドバイスを受けられるというメリットもあります。たとえば融資の関係上、経営状況の分析に長けた金融機関からアドバイスを受けられる可能性がある他、M&Aをする場合はM&Aアドバイザー、弁護士、税理士など、専門家の適切なアドバイスを受けられるメリットがあるのです。
スポンサー(第三者)支援による会社再建のデメリット
スポンサーによる会社再生にはふたつのデメリットがあります。
- 外部からの介入
- 社内の体制変更や混乱につながる可能性がある
会社によっては外部の人間に自社内の事情に介入されたくないことでしょう。第三者に会社再建をサポートしてもらう場合、社内事情を第三者に知られることになります。外部からの指摘や介入が嫌な場合は、第三者支援による会社再建はデメリットになるのです。
M&Aによって会社再建をする場合、M&Aの手法や相によっては社内の体制変更につながる可能性があります。会社経営は再建できますが、会社のかたちが変わってしまうことがあるのです。加えて、M&A前にしっかりと計画を立てておかないと、M&A後に社内が混乱する可能性があります。
方法④法的手続きによる会社再建(法的整理)
法的手続きによる会社再建とは、裁判所の関与により会社を再建する方法になります。法的整理とも呼ばれます。
法的整理には大きくわけてふたつのパターンがあります。ひとつは「清算型手続き」。もうひとつは「再建型手続き」です。清算型手続きは、「破産」「特別清算」など。再建型手続きは「民事再生」「会社再生」などになります。
清算型手続きは会社を清算し、終了させるための手続きです。よって、会社再建の場合は主に再建型手続きを選択して進めることになります。
法的手続きによる会社再建(法的整理)のメリット
法的手続きによる会社再建のメリットはふたつです。
- 債権者などにも法的拘束力がある
- 債務のカットや分割払いなどが認められる
法的手続きは裁判所の監督によって行われるため、債権者も拘束されるというメリットがあります。債権者が交渉に応じなければ私的な会社再建は難航しますが、法的手続きによる会社再建は債権者の同意を得る必要はありません。同意しない債権者に関しても、法的整理を拒むことはできないのです。
法的手続きによる会社再建の中でも民事再生や会社再生を使えば、債務の一部カットや分割払いなども認められるというメリットもあります。債権者の扱いも平等なので、債権者にとってもメリットのある方法です。
法的手続きによる会社再建(法的整理)のデメリット
法的整理のデメリットはふたつです。
- 手続きが難しい
- 会社の社会的信頼が損なわれる可能性がある
法的整理は裁判所が介入するため、裁判所で手続きをする必要があります。また、法的整理を進めるためには法律の知識も要するため、会社の経営者が自分で手続きしようとしても、煩雑さや難解さから、手続きが行き詰まってしまうことがあるのです。
法的整理の中のどの方法を選ぶかという段階で迷うことも少なくありません。弁護士などの専門家に相談することによって手続きを代理してもらえるため、デメリット回避の方策を考えておきましょう。手続きや方法選びが遅くなると、それだけ会社再建に時間がかかってしまいます。
法的整理は裁判所で手続きを進めるため、基本的に外部に会社再建の事実を知られてしまいます。民事再生などは会社再建の可能性があるからこその手続きですが、対外的には「経営状況が思わしくない」「破綻した」といったレッテルを貼られてしまう可能性があるのです。
会社再建の4つの方法で再生が難しいときの対処法
会社再建の4つの方法で対処が難しい場合は「廃業」や「倒産」などを検討する必要があります。
廃業とは、会社を経営者などが自主的に終わらせる手続きのことです。倒産とは、資金繰りや返済状況などが苦しい会社がプラスやマイナスを清算した上で会社を終わらせる手続きになります。前述した会社再建の法的手続きの中でも清算型の手続きを選べば、会社再建ではなく会社終了の流れになるのです。
会社再建がどうしても難しい場合は、経営状況によって廃業や清算型手続きなどで対処することになります。
最後に
会社再建には4つの方法があります。会社の経営状況や再建の難易度、周囲(債権者)の協力が得られるかなどによって適切な会社再建の方法が変わってくるのです。
会社の経営状況が思わしくない場合は、コスト削減などの自助努力によって会社再建が必要な状況を予防するなど、予防的な意味合いで使える方法もあります。
弁護士や税理士などの専門家に相談し、会社再建のための適切な方法を選ぶとともに、近い将来を見据えて動くことをおすすめします。