法人破産手続きの流れ!

有名な企業が「倒産」したというニュースをよく目にすることはあるのではないでしょうか。

ここでいう会社の「倒産」と「破産」とは、違うということをご存じでしょうか?意外にこの二つの言葉の違いはないと認識している方が多いのです。

どちらも会社の経営が行き詰まることで起こることではないのか?と思われるでしょう。

その考え方は、間違いではないのですが、倒産と破産は違うのです。

今回は、まず倒産と破産の違いをご説明していき、会社破産(法人破産)とはどのような状況をいい、また、その手続きの流れと、会社の債務整理についての基礎的な知識を弁護士が徹底的に解説していきます。ぜひご覧ください。

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破産と倒産の違い

一般には、会社の「倒産」と「破産」は同じ意味として使われることがあります。

まず、破産と倒産の違いについてご説明していきましょう。

会社の「倒産」とは?

会社が期限の到来している債務(借金)の弁済が困難となり、営業を継続することが難しくなることをいいます。

つまり、倒産状態になった会社の選択肢の一つが「破産」なのです。

このことから、倒産と破産では意味合いが違ってくることがお分かりいただけると思います。

理解を深めていただくためにも。破産手続きの開始についての条文をここでご紹介します。

→条文:会社法484条「清算株式会社/破産手続の開始」

第484条 清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。

冒頭でもご説明したように借金が返せない状態となると倒産とうことになり、破産することを選択したならば、清算人は手続きを開始しなければいけないということです。

ここでいう「清算人」についても条文では次のように明記しています。

→条文:会社法第478条

次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。

一 取締役(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)

二 定款で定める者

三 株主総会の決議によって選任された者

破産の着地点は会社が消滅すること

破産とは、倒産状態に陥った会社について、会社の総財産を換価して、債権者に対して公平に配当を行うことを目的とした清算の手続であり、その完了により、会社が消滅するものをいいます。

倒産状態からの選択肢には、大きくわけて「破産」と「再建」がある

倒産状態に陥った会社の対応としては、会社を「清算」し消滅させる破産以外に、会社の「再建」を目的とする他の選択肢もあります。

破産のメリットとデメリットとは?

破産のメリット

経営困難な状態から解放される

破産のメリットでまず挙げられるのが、経営者が苦しい経営から解放されることです。

会社経営の状態が悪化してくると、経営者は非常に精神的に追い込まれます。負債を支払えるのか、従業員への給与は?経営にかかわる経費さえも支払っていけるのか?資金繰りのことで頭がいっぱいになり、肝心の経営活動に目が向けられなくなり、ますます悪循環へと陥っていくのです。負債の支払いが滞ると、債権者が取り立てにやってくるケースもあります。

破産してしまえば、まず債権者からの取り立てはなくなります。一息つくこともできて、今後の経営活動について目を向けることができます。

取り立てが止まる

先ほどの項目でもお話しましたが、債権者からの厳しい取り立てを受けることが破産することで止まることになります。債権者といっても、会社経営者の場合は、個人のような貸金業者ではなく、買掛金を持った取引先やリース債権者なども多くなるので、取引先の企業が直接取り立てにやってきます。ときには会社の事務所に乗り込んできて、ストックしている商品を引き上げられるケースも見受けられます。

破産手続きを弁護士に依頼すると、こうした無茶な取り立てを止めることができます。

これは大きなメリットと言えるでしょう。

会社は消滅するがリスタートを切ることができる

会社が破産すると会社は消滅してしまいますが、先述しています通り、悪化した経営状態から、債権者の取り立てなどから代表者は解放されることになり、0からとはなりますが、再スタートを切ることができるのです。会社を清算して、また別の事業を始めることや、別の会社に就職することも可能です。会社経営で得た経験を活かすことができます。

会社経営について破産はしたけれど、また新しい生活を始めることはできるというところがこの破産の特筆すべきメリットです。

破産後に別業界、全く新しい事業で成功している経営者は多数存在します。

破産のデメリット

会社保有の資産を失う

法人が破産すると、法人の所有していた「財産」はすべて失われます。法人名義の不動産や預貯金などの資産もなくなりますし、ブランドや信用などの形のない財産もなくなってしまいます。法人を設立してから経営者が積み上げてきた一切合切が破産によって一挙になくなるダメージは大きいものです。

会社がなくなってしまう

法人が破産すると、その法人は消滅します。創業者にとって、自分が設立して育てた会社がこの世からなくなることは、子供がいなくなるのと同じように辛く感じるものです。また親から引き継いだ会社などであっても、自分の代で破産させてしまったとなると、大きな責任感と落胆、自信喪失につながってしまうでしょう。

信用を失う

会社が破産しても代表者が個人破産しなければ、基本的に「ブラックリスト」状態にはなりません。しかし世の中からの「信用」というものがあります。「以前に会社を経営していて破産させた人だ」という噂が広まると、さまざまな意味で居心地が悪く感じることもあるでしょう。

個人保証していたら代表者の財産もなくなる

会社破産をしても、代表者が個人破産をしなければ代表者の財産には影響がありません。しかし現実には、代表者が個人保証していることが多いので、法人と代表者がセットで破産する事例が多々あります。

そのような場合には、代表者の個人的な資産までほとんど失われるので、その後の自分や家族との生活に大きな支障が及んでしまいます。

法人破産を選択するときには、こうしたデメリットも理解した上で行うことが大切です。

倒産は再建型、清算型に分かれて、それぞれまた2つずつのパターンに分かれる

◎ここでいう再建型、清算型は裁判所が関与する法的整理となります。

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破産手続きを開始するための要件とは?

会社が破産手続を開始するための要件は、①支払不能または②債務超過です。

支払不能とは、会社が弁済期の到来した債務を一般的、かつ、継続的に弁済することができないと判断される客観的状況を意味します。

債務超過とは、会社の債務額の合計が資産額の合計を超える状態を意味します。

たとえば、ある会社が総額1,000万円の債務を抱えており、総額500万円の資産を保有している場合には、債務超過となります。

もっとも、その会社が金融機関から多額の融資を受けることのできる信用があり、借入により返済資金を調達することができるのであれば、支払不能ではありません。

逆に、その会社が総額1,500万円の資産を保有している場合には債務超過ではありませんが、保有している資産を現実に換価することが困難であるような場合には、支払不能となります。

支払不能と債務超過は、それぞれ破産手続を開始するための別個の要件として存在しており、支払不能あるいは債務超過のどちらかの状態にあれば、破産手続は開始することができます。

しかし、現実に破産する会社は、支払不能の状態かつ債務超過の状態であるようなケースが多いようです。

清算型と再建型について

◎清算型

清算型とは、倒産状態の会社の資産を換価処分して、これを債権者に配分すると同時に会社自体を消滅させる手続のことです。

この清算型の法的整理としては、「破産」と「特別清算」があります。

ここでは、少し破産とよく一緒に取り上げられる特別清算について詳しくご説明します。

破産との違いを浮き彫りにしていきます。

・特別清算とは?

一言で言えば「特別清算・・・自主的に清算を進める倒産手続き」ということです。

経営活動を続けていて、支払いが滞ることが想定される、すでに現在赤字となっているという場合、破産するしかないという結論に行きつく方が多いのですが、株式会社の場合には「特別清算」という選択肢もあるということなのです。

特別清算は破産ほど厳格な手続きではなく、会社の旧経営陣が自主的に進めることができます。債権者から強硬に反対され、その債権者との交渉が難航する場合などには進められなくなるということも考えられます。

しかし、赤字会社がたたむときには「特別清算か破産か」を選択できるケースがあるということをご理解いただきたいのです。

特別清算と破産の違い

重大な違いとして「破産管財人」が選任されるかどうかがあります。

破産管財人とは、破産手続きにおいて会社の財産を預かり現金化して債権者に配当する人です。

破産手続きが開始すると、必ず「破産管財人(弁護士)」が選任されて会社の財産の換価と配当が始まります。その時点で会社の経営陣は手続きから外れます。

一方特別清算の場合には「特別清算人」が選任されますが、経営者がそのまま就任することも可能です。

破産との違いは、対象は誰か?ということ

次に「誰が利用できるのか」も大きく違います。破産の場合には株式会社に限らず、合同会社、合資会社、NPO法人等の各種の法人、個人も利用できます。

一方特別清算の場合には「株式会社」しか利用できません

特別清算についてまとめ

《対象は株式会社のみ》

破産と似た制度に「特別清算」について最終的にまとめます。

特別清算は、債務超過の疑いがあって通常の清算手続きを進められない株式会社が、裁判所の関与のもとに清算を進める方法です。

このポイントが重要なのです。したがって特別清算を利用できるのは、株式会社のみということになります。

《破産との違いは、特別清算人が進めていく点》

そして、特別清算と破産の大きな違いは、破産の場合には裁判所が選任する破産管財人が進めるのに対し、特別清算の場合には「特別清算人」が進めるところです。

《破産と特別清算の大きな違い》

・破産管財人は、管内の「弁護士」が選任される。

・特別清算人には、会社の元代表者がそのまま就任するケースが多くみられる。

→特別清算は、自主的に清算したい場合に向いています。

《特別清算を利用すべきケースとは》

・支払い不能や債務超過の程度が比較的小さい

・自分の手で会社の清算手続きを進めたい

《特別清算を行う上で気を付けたいケースとは?》

・債権者との協議がうまくいかないケース

・事案が複雑で管財人の関与が必要なケース

→特別清算手続きが廃止されて破産手続きに移行されることがあります。

補足ポイント:会社が破産すれば社長がとるべき責任とは

ここで気になるのは、会社の「社長」は、債権者に配当を行なった上でも残った借金を返済しなくて良いのか、という問題でしょう。

結論から言うと、基本的には会社が破産しても、社長がその借金を肩代わりする必要はありません。そもそも個人と法人は別人格ですから、会社が破産したからといって、当然に個人である社長が借金を肩代わりする必要はありません。

しかし、社長は銀行や取引先と個別に「連帯保証契約」を締結していることが多く、契約書上で会社の連帯保証人になっているため、会社が破産した場合はその債務が社長に回ってくる事になります。

そのため、実務上は、会社の破産と社長の破産は同時に手続をする事が多くなります。

会社の債務整理方法の種類

法的整理と私的整理の2種類

①法的整理

法的整理とは、裁判所の関与する、法令に基づく債務の整理です。

典型は、破産、特別清算、民事再生、会社更生です。

②私的整理

私的整理とは、裁判所の関与しない債務の整理です。その方法等につき法令による定まったルールはなく、原則として、利害関係人の協議と合意により進められる手続です。

任意整理と言われることもあります。

法的、私的整理の長所と短所について

法的整理の長所は、裁判所の関与する法令に基づく手続であるため、手続の平等・公平・適正を強制的に実現していくことができる点です。

その反面、利害関係人の協議等による柔軟な処理は難しく、また、一般的には、私的整理より手続期間は長期となり、私的整理より高い費用を必要とする短所があります。

私的整理は、基本的に利害関係人の協議と合意により、会社の債務整理を進めることができるので、柔軟な処理を図ることができ、法的整理より迅速に行うことができることが長所とされます。

私的整理の短所としては、利害関係人の合意を基本とするため、協議に時間がかかる点や合意の得られない場合には手続は進められない事態が生じうる点、また、裁判所が関与することがないため、手続の平等・公平・適正を害する危険(たとえば、特定の債権者だけに有利となるような整理を強引に進めてしまうなど)が挙げられます。

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破産手続きの流れ

この項目では、破産を決意してどのような手続きがあるのかをご説明していきます。

準備作業

・多くの必要書類をそろえる

破産するときには、申立の準備作業が必要です。必要書類や資料がたくさんあるので集めないといけません。

・弁護士を探して、委託契約をする

弁護士に手続き依頼するならば、弁護士を探して、相談、そして委任契約を締結し、着手金を支払う必要もあります。

破産手続きを弁護士に依頼するメリットとして挙げられるのが次の通りです。

・申立書などの書類は弁護士が作成してくれる

・抜け落ちがないように集めるべき書類についても指示を受けられる。

・弁護士が受任通知を送った時点で債権者からの督促は来なくなる

これらのメリットにより、依頼者は破産に関する準備作業へ集中することができます。

裁判所への申立て

必要書類等の準備が整ったら破産申立を行います。弁護士に依頼した場合には、申立手続は弁護士が行ってくれるので、法人代表者などの依頼者が裁判所に行く必要はありません。

破産審尋、破産手続き開始決定

「破産審尋」とは?

申立をすると、一般的に破産手続きを開始するかどうか判断するために裁判官が破産者と面談して質問をする手続きのことです。このときには、法人の代表者も裁判所に行って裁判官と面談しなければなりません。この「破産審尋」の結果により破産の要件を満たしていると裁判所に判断されると次の段階、「破産手続きの開始決定」がおります。

「破産手続きの開始決定」において気を付けたいこと

裁判所によっては、申立後、申立代理人の弁護士と破産管財人予定の弁護士、裁判官の3者で面談をして、破産手続き開始決定されることもあります。

これは、各地の裁判所によって運用状況が異なります。詳しくは地域の弁護士に確認するようにしてください。

破産管財人の選任する

破産手続き開始決定があると、「破産管財人」が選任されます。破産管財人とは、会社の財産や負債の状況を調べたり、財産を換価して配当したりする人です。会社破産の場合には「同時廃止」がなく「管財事件」しか存在しないので、破産手続き開始決定と同時に必ず破産管財人が選任されます。

管財人が選任されると、管財人に対して会社の財産や負債、帳簿などの資料をすべて引き渡します。その後は会社に届いた郵便物はすべて管財人の事務所に届くようになります。

財産の換価、調査

管財人が選任されると、管財人は会社の資産や負債の状況、代表者に不正行為がないかなどを調べ始めます。そのため管財人と代表者が何度か面談をすることになり、代表者は管財人からいろいろと話を聞かれます。もしも財産隠しや債権者隠しなどが明らかになれば、破産手続きに支障が発生するので注意が必要です。

また管財人は、会社の財産をどんどん現金化していきます。不動産や動産は売却し、債権は回収して管財人の口座に入金して、債権者に配当するための資金を貯めていきます。税金などの優先する債権は随時支払をします。

債権者集会

管財人が換価の業務をしていく間、裁判所で何度か「債権者集会」が開かれます。ここでは管財人が、現在の調査や換価の状況などについて、出席した債権者に報告します。個人の債権者などがいる場合には、債権者集会が紛糾するケースもありますが、債権者が金融機関などの場合には騒ぎになることは通常ありません。

債権者集会は月1回程度開かれますが、当初は債権者の出席数が多くてもだんだん出席しなくなる事例が多数です。

配当を行う

換価業務が終了すると、管財人は各債権者に対して配当を行います。破産債権者には種類があり、優先的に配当を受けられる債権者と一般の債権者、劣後する債権者があります。管財人は法的な順序に従って配当を終え、裁判所に報告します。

廃止、終結、法人の消滅

換価も配当も終了すると、破産手続きが終了します。そして法人が消滅し、裁判所書記官の職権によって破産手続き廃止や終了の登記が行われ、会社の登記も閉鎖となります。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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