信用保証協会の信用保証制度を利用した融資とは?メリット・デメリットを解説

銀行から融資を受けられずに悩んでいる中小企業や個人事業主の方は、信用保証協会を利用することで融資を受けられる可能性があります。

本記事では、信用保証協会の制度の種類、利用するメリット・デメリットなどについて解説していくので、信用保証協会を利用した融資を検討している方は参考にしてください。

信用保証協会とは

信用保証協会は信用保証協会法に基づいて、中小企業や小規模事業者がスムーズに資金調達できるように支援することを目的に設立された公的機関です。

主に以下のサポート業務を行なっています。

  • 中小企業や小規模事業者が金融機関から資金を調達する際に、保証人なってくれる「信用保証制度」に関する業務
  • 利用者と他社との取引を仲介するビジネスマッチング業務
  • 資金調達や会社設立などの経営に関するアドバイス業務
  • 財務診断用ツールの無料提供

上記のように、信用保証協会は保証業務以外にも、中小企業や小規模事業者の経営が円滑に行えるようなサポートを行なっている組織であることを覚えておきましょう。

ちなみに、信用保証協会は47都道府県と4市(横浜市・川崎市・名古屋市・岐阜市)の51箇所に拠点を構えており、各信用保証協会は信用保証業務改善のための調査や企画運営などを行っている「全国信用保証協会連合会」という組織に属しています。<h2>信用保証協会の信用保証制度を利用した融資の仕組み</h2>

信用保証制度は中小企業や小規模事業者が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が債務保証をしてくれる制度です。

制度を利用することで、万が一返済できずに滞納した場合も、金融機関は信用保証協会に借入金を弁済してもらえます。

このため、金融機関も融資をしやすく、借主も容易に借り入れることが可能です。

実際、初めて金融機関に融資申し込みする場合は、ほとんどの方が金融機関から「保証付き融資にしましょう」と提案されます。

金融機関から融資を受けたい受けられない中小企業や小規模事業者の方は、信用保証制度の利用を検討してみてください。

なお、信用保証制度を利用する場合は、当然ながら保証を受ける対価として信用保証料を支払わなければならないことを知っておくようにしましょう。

信用保証協会の保証制度の種類

信用保証協会の保証制度には5種類あり、それぞれ特徴が異なります。

それぞれの特徴について、下記の表にまとめているので確認しておいてください。

種類 保証限度額 保証期間
流動資産担保融資保証制度(ABL保証) 2億円 根保証:1年間

個別保証:1年以内

経営力強化保証制度 2億8,000万円 運転資金:5年以内
小口零細企業保証制度 2,000万円 各信用保証協会が定めによる
特定社債保証制度 4億5,000万円 7年以内
借換保証制度 2億8,000万円 10年以内

出典:さまざまな保証制度|一般財団法人全国信用保証協会連合

出典:借換保証 | 千葉県信用保証協会

上記の表を参考に、自社にとって最適な信用保証制度がどれかを判断するようにしましょう。

なお、各信用保証協会によって条件が異なる場合もあるため、詳細については各自治体にある信用保証協会に確認することをお勧めします。

流動資産担保融資保証制度(ABL保証)

流動資産担保融資保証制度(ABL保証)とは、自社が所有する売掛債権や棚卸資産を担保にして金融機関からの融資を保証する制度です。

制度の詳細については、以下の表にまとめているので確認しておいてください。

項目 内容
保証限度額 2億円(金融機関からの借入限度額は2億5,000万円)
保証期間 根保証(将来発生する不特定の債務を保証すること):1年間

個別保証:1年以内

保証人 法人代表者(必要な場合のみ)
担保 売掛債権

棚卸資産

保証料率 借入極度額・借入金額に対し年0.68%

上記の特徴を理解したうえで、利用するべきかどうか判断しましょう。

経営力強化保証制度

経営力強化保証制度とは、中小企業や小規模事業者の資金調達にあたって、金融機関が認定経営革新等支援機関と連携して行う経営支援を受けながら融資を保証してくれる制度です。

具体的には事業計画の策定支援や計画の実行のサポートなどを受けられます。

そのため、創業したての企業の方におすすめの制度です。

なお、この制度を利用するためには、上記のサポートを受けつつ事業計画の策定や進捗の報告が必要になるので覚えておきましょう。

制度の詳細については、以下の表にまとめていますので確認しておいてください。

項目 内容
保証限度額 2億8,000万円(一般の普通・無担保保証)
保証期間 運転資金:5年以内

設備資金:7年以内

既保証の借換:10年以内

保証人 法人代表者(必要な場合のみ)
担保 必要に応じる
保証料率 責任共有制度の対象:0.45~1.75%

責任共有制度の対象除外:0.5~2%

資金用途によって保証期間が異なるので、事前の確認が必要です。

小口零細企業保証制度

小口零細企業保証制度は、小規模事業者が信用保証協会と金融機関が保証責任を共有する「責任共有制度」の対象外となる制度になります。

対象外になることで金融機関がリスクを負うことがないため、融資審査に通る可能性が高くなるのが特徴です。

ただし、利用できる方は中小企業法第2条第3項で定められている「常時使用する従業員の数が20人(商業・サ-ビス業は5人)」以下で、中小企業信用保険法施行令第1条第1項に定める業種に属する事業を行う事業者」という条件を満たした「小規模企業者」に限られるので利用する際は注意が必要になります。

制度の詳細については、以下の表にまとめているので確認しておいてください。

項目 内容
保証限度額 2,000万円(すでに信用保証制度を利用した融資を受けている場合はその残高と合算する)
保証期間 各信用保証協会が定めによる
保証人 法人代表者(必要な場合のみ)
担保 原則不要
保証料率 各信用保証協会が定めによる

他の制度と比較して保証限度額が少ないため、多額の借入れを検討する際は注意するようにしましょう。

特定社債保証制度

特定社債保証制度とは、社債の発行を保証し資本市場からの資金調達を円滑にするための制度です。

利用するためには、下記の表の通り純資産の要件を満たしたうえで、「自己資本比率・純資産倍率」のいずれかと、「使用総資本事業利益率・インタレスト・ガバレッジ・レーシオ」のいずれかを満たす必要があります。

※インタレスト・カバレッジ・レシーオとは、債務の返済能力を見る指標のこと

また、制度の詳細については、以下の表にまとめていますので確認しておいてください。

項目 内容
保証限度額 4億5,000万円
保証期間 7年以内
保証人 不要
担保 信用保証協会所定
保証料率 社債総額に対し0.45%~1.90%

社債を利用して資金調達を考えている方は、特定社債保証制度の利用を検討してみましょう。

借り換え保証制度

借換保証制度とは、複数利用している信用保証付き融資の一本化を促進することで、事業者の月々返済額を軽減するための制度です。

中小企業・小規模事業者の資金繰りを円滑化することを目的にしています。

制度の詳細については、以下の表にまとめていますので確認しておいてください。

項目 内容
保証限度額 2億8,000万円
保証期間 10年以内
保証人 法人代表者
担保 必要に応じて求める
保証料率 0.68%または0.8%

信用保証付き融資を複数利用している方は、借換保証制度の利用を検討してみてください。

信用保証協会を利用して融資を受けるメリット

信用保証協会付き融資には、多数のメリットがあります。

メリットを理解しておくことで自社にとって最適な方法なのかの判断に使えるので、解説する内容をよく確認しておきましょう。

金融機関の融資を受けやすくなる

信用保証制度を利用して融資を受ける最大のメリットは、事業の実績が少ない事業者や初めて融資を受ける企業であっても金融機関の融資審査に通りやすくなることです。

仮に企業が債務不履行に陥ったとしても、信用保証制度を利用していれば支払えなかった借入金を信用保証協会が弁済してくれるため、金融機関はリスクを抑えることができ融資に踏み切れます。

一方、信用保証協会などの第三者の保証がないプロパー融資では、企業が債務不履行に陥ると金融機関は融資した資金が回収できず貸し倒れになってしまう可能性があり、金融機関はどうしても懸念します。

そのため、プロパー融資の審査は厳しくなり、事業規模が大きく事業実績が豊富な会社でないと、多くの場合は融資を受けられません。

ただし、プロパー融資は保証協会付き融資とは違って以下のメリットがあります。

  • 証協会付き融資よりも融資利率が低い
  • 融資限度額の上限がない
  • 保証料がかからない

プロパー融資には上記のようなメリットがあることも理解しておきましょう。

このような特徴の違いがあるため、創業当初など事業実績が乏しく事業規模も小さい場合は、プロパー融資ではなく保証協会付き融資の利用を検討してみてください。

なお、保証協会付き融資を利用した次は、プロパー融資の利用を目指しましょう。

保証人がいなくても融資を受けられる可能性が高い

信用保証協会の保証制度の多くは、保証人について「原則不要」や「法人の代表者のみ」と記載があり、保証人がいなくても利用できます。

個人事業主の場合でも連帯保証人は原則不要です。

しかも、信用保証付き融資の90%以上は無担保での融資になるため、担保を心配する必要がありません。

このように、担保や保証人が用意できない方でも利用できるのが信用保証付き融資の大きなメリットです。

長期借り入れができる

信用保証付き融資は種類にもよりますが、保証期間が10年以上の長いものもあります。

実際、東京信用保証協会には保証期間が15年を超えるものもあり、長期間の融資であっても融資審査に通る可能性が高いです。

それにより長期的な視点で経営に取り組むことができ、資金繰りの安定化や事務体質の強化を図れます。

信用保証協会を利用して融資を受けるデメリット

メリットがある一方で、信用保証付き融資にはデメリットもあります。

信用保証付き融資の利用を検討している方は、デメリットも理解しておくようにしてください。

信用保証料を支払う必要がある

信用保証付き融資を受ける企業は信用保証協会に対して、一定の「信用保証料」を支払わなければなりません。

ちなみに、信用保証料は融資額に対して割合が定められており、利用する信用保証協会や利用する制度によって割合が異なります。

例えば、前述した流動資産担保融資保証制度の場合、保証率は「借入金額の0.68%」です。

仮に1億円の借り入れを行う場合、信用保証料として「68万円」を支払うこととなります。

このように、金額に応じた信用保証料を支払う必要があることを覚えておきましょう。

融資まで時間がかかる

信用保証付き融資は、プロパー融資と比較すると融資が実行されるまでに時間がかかります。

金融機関の融資審査以外にも、信用保証協会の審査を受けなくてはならないためです。

ちなみに、信用保証付き融資の融資実行までの期間は2ヶ月程度と言われています。

信用保証付き融資の利用を検討している方は、融資が実行されるまで時間がかかることを理解しておくようにしてください。

信用保証付き融資を受ける流れは以下のとおりです。

  1. 保証の申し込みを行う
  2. 保証審査が行われる
  3. 融資審査が行われる
  4. 融資が実行される
  5. 返済する

上記の流れについて、詳しく解説します。

保証の申し込みを行う

金融機関または信用保証協会の窓口で保証の申し込みを行います。

その際に必要になる書類は以下の通りです。

  • 履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)
  • 申込人・連帯保証人・物上保証人等の印鑑証明書
  • 納税証明書
  • 確定申告書
  • 試算表

出典;必要な書類 | 大阪信用保証協会

必要な書類は利用する保証制度によって異なるため、事前に確認するようにしてください。

保証審査が行われる

申し込み手続きが完了すると信用保証協会で保証審査が実施されます。

主な審査内容は以下の通りです。

  • 利用要件を満たしているのかの有無
  • 資金の必要性
  • 資金の内訳
  • 見積もりの妥当性
  • 会社の業績
  • 会社に返済能力の有無

上記の内容を審査した結果、保証が適切であると認められると金融機関に「信用保証書」が発行されます。

融資審査が行われる

信用審査に通過すると金融機関による融資審査が行われます。

主な審査内容は以下の通りです。

  • 返済能力の有無
  • 融資希望額が適正かどうか
  • 赤字の有無
  • 会社の資産がいくらあるのか

上記を審査して金融機関が問題ないと判断すれば融資を受けることが可能です。

ちなみに、金融機関の窓口に相談した場合は、先に金融機関の融資審査が実施されます。

融資が実行される

全ての審査に通過すると「信用保証書」に記載された条件にそって金融機関から融資が実行されます。

この際に、金融機関を通じて信用保証料の支払いが必要です。

ちなみに、信用保証を利用する際に事務手数料などの費用は一切かかりません。

返済する

融資が実行された後は契約した返済条件に基づき金融機関に借入金の返済を行います。

そして、返済中に万が一返済ができなくなった場合は、信用保証協会が金融機関に対して代位弁済してくれます。

ただし、代位弁済後は信用保証協会に借入金を支払わなければならないことを覚えておきましょう。

信用保証協会を利用して融資を受けるうえでの2つの注意点

信用保証付き融資を利用する際は、理解しておくべき2つの注意点があります。

理解せずに融資を利用してしまうと、後々後悔する可能性があるため、これから解説する信用保証付き融資を利用する際の2つの注意点を理解したうえで検討するようにしてください。

代位弁済でも債務が無くなるわけではない

信用保証協会の保証は、あくまでも本人の代わりに金融機関からの借入金を代位弁済してくれるものです。

肩代わりしてもらっているだけで借入金が無くなるわけではないため、信用保証協会に返済する必要があります。

このため、万が一債務不履行に陥った際に、どのように信用保証協会に返済を行うのかも考えたうえで利用を検討するようにしてください。

信用保証協会と金融機関の審査がある

前述したように、信用保証付き融資を受けるには信用保証協会と金融機関の両方の審査に通過する必要があります。

仮に信用保証協会の審査に通過しても、金融機関の審査で落ちてしまうケースもあるため、必ずしも片方の審査に通ったからと言って融資が受けられる訳ではないことを知っておきましょう。

まとめ

信用保証協会を利用した融資は、融資が受けやすいなどのメリットがあるため、融資や事業実績がない企業の方に向いています。

しかし、融資実行に時間がかかるなどのデメリットもあるため、信用保証付き融資についてしっかりと理解しておくことが重要です。

この記事では信用保証付き融資について詳しく解説しているので、利用を検討している方は参考にしてみてください。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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