融資の据置期間とは?メリットやデメリット、設定する際の注意点などを解説

事業を始める場合、金融機関から融資を受けるケースが多いですが、その際に「据置期間」を設定できることをご存じでしょうか。

簡単に言うと、据置期間とは事業者の返済負担が軽減される期間です。

この記事では融資の据置期間について詳しく解説します。

据置期間のメリット・デメリット、設定する際のポイントや注意点等を説明しますので是非参考にしてください。

据置期間とは

融資の据置期間とは、元金の返済が猶予され、利息のみの支払いが発生する期間です。

例えば、事業を開始するために銀行から借り入れた場合、暫くの期間は元金を返済せず利息分のみを銀行に支払います。

本来であれば、金融機関の融資を利用した場合、初めから元金と利息を返済する必要がありますが、一定期間は元本の返済を猶予されるのです。

据置期間のメリット

融資を利用する際に据置期間を設定するメリットは以下の2点です。

・事業開始時の返済負担が軽減される

・事業に集中できる

それぞれのメリットを具体的に解説します。

事業開始時の返済負担が軽減される

事業開始当初、事業者の返済負担が軽減されることが最大のメリットです。

事業を開始したばかりの時期は、広告宣伝費や諸費用等、様々なところで費用がかかります。その一方で、事業が軌道に乗るまでは収益がそこまで上がらないため、資金繰りが厳しくなることがあります。

そこで据置期間を設定すると、一定期間は元金を返済せずに済むため、資金繰りが楽になるというメリットがあるのです。

事業開始当初、資金に余裕がない場合や売上の見込みが立たない場合は、据置期間を設定することをお勧めします。

事業に集中できる

2つ目のメリットは、据置期間を設定することで事業に集中できるようになることです。

日本政策金融公庫の調査では、開業当初に苦労したことの上位に「資金繰りや資金調達」が上げられています。

開業当初は費用がかかる一方で売上が少ないため、借入金の返済は事業者にとって大きな負担となるでしょう。

さらに資金繰りが悪化すれば、資金調達に労力や時間を費やすことになるので、本来の事業に集中できなくなります。

据置期間は元金の返済を猶予されるので、資金のストレスが軽減し、事業者が収益を上げることに集中できるでしょう。

参考:日本政策金融公庫ࠖ「2021年度新規開業実態調査」

据置期間のデメリット

融資の据置期間を設定した場合、以下2点のデメリットも生じます。

・据置期間後の返済負担が大きい

・利息の総額が高くなる

それぞれのデメリットについて解説します。

据置期間後の返済負担が大きい

1つ目のデメリットは、据置期間終了後の返済負担が大きくなることです。

据置期間は利息のみを支払うため、据置期間が終わってから返済終了日までの期間で元金を返済する必要があります。

具体的な例で言うと、500万円を借り入れて、7年で返済する場合、500万円÷84ヶ月で、毎月の返済額が約6万円となります。

一方、1年の据置期間を設けた場合、500万円÷(84カ月-12カ月)で、毎月の返済額は約7万円となります。据置期間があると毎月の返済額が約1万円高くなるのです。

据置期間を決める際は、その後の支払いが可能かも検討する必要があります。

利息の総額が高くなる

据置期間を設定すると、設定しなかった場合に比べて支払う利息の総額が高くなります。

据置期間中は利息のみの支払いで元金が減らないため、返済期間全体で見ると支払う利息が大きくなるのです。

据置期間が長く、融資額が大きいほど、利息の総額が高くなる点には注意が必要です。

据置期間を設定する方法

据置期間を設定するかどうかは事業者の任意であり、融資の申込時に据置期間を申請する必要があります。融資の申込書に据置期間を希望するかどうかの記載欄があるので、そこに「〇年〇月まで希望」と記載します。

申請しないまま返済を開始した場合、返済途中で据置期間を設定できないので注意しましょう。

また据置期間を設定するには、据置期間を設定することに計画性があることを金融機関に示す必要があります。金融機関に事業計画を提出する等、どれぐらいの期間で売上が見込めるのか等を説明できる必要があるのです。

単に返済を遅らせたいという意図では、据置期間を設定できないので注意しましょう。

客観的な根拠をもって計画を立てることで、信憑性が高まり、希望の据置期間を設定しやすいでしょう。

据置期間を設定する際のポイント

融資の据置期間を設定するにあたってのポイントは以下の3点です。

・売上が見込める時期を明確にする

・データ等を根拠として据置期間を設定する

・必要に応じてリスケジュールが可能

それぞれのポイントを解説します。

売上が見込める時期を明確にする

据置期間を設定するにあたって、いつから事業の売上を見込めるのかが重要となります。

据置期間後は元金の返済が始まるため、売上が立つ時期や現金化される時期を明確にしておく必要があるのです。

比較的早期に売上が立ち、現金化されるのであれば、据置期間を長くする必要はありません。一方、売上の立つ時期を想定しにくい場合は、据置期間を長めに設定することになるでしょう。

データ等を根拠として据置期間を設定する

据置期間を設定する際は、データ等の客観的な根拠に基づくことが重要です。

主観的な感覚で据置期間を設定するより、データ等を根拠として、売上が立つ時期を見極めて設定するのがより確実です。

例えば、同規模・同業者の売上が立つまでの期間の調査や返済シミュレーション等を行うと失敗しにくいでしょう。

基本的に融資を受ける際は、事業計画書の提出を求められることが殆どですが、その際も無理のない計画を立てることが重要です。

また具体的かつ客観的な根拠があることで、希望する据置期間が通りやすいと考えられます。

必要に応じてリスケジュールが可能

一度据置期間を設定した場合であっても、状況によってはリスケジュールをすることができます。

返済条件の変更となるので容易ではありませんが、万一回収不能となる可能性がある場合、金融機関がリスケジュールに応じてくれることがあります。

リスケジュールが前提なのは望ましくありませんが、必要に応じてなるべく早期に検討することが重要でしょう。

据置期間を設定する時の注意点

融資の据置期間を設定する場合、以下の2点に注意する必要があります。

・据置期間は返済期間に含まれること

・据置期間の設定が希望通りにならないことがある

それぞれの注意点について解説します。

据置期間は返済期間に含まれること

先述したとおり、据置期間は返済期間に含まれます。

つまり据置期間分、元金を返済する期間が短くなるのです。

例えば返済期間が7年、据置期間が1年の場合、1年間は利息だけを支払い、6年で元金を返済しなければなりません。返済期間が8年になるわけではないので注意しましょう。

据置期間の設定が希望通りにならないことがある

据置期間は必ずしも希望通りにならないことがあります。

最終的に決定するのは金融機関の担当者です。例えば、日本政策金融公庫の新創業融資制度の据置期間の場合、運転資金が最大1年、設備資金が最大2年ですが、必ずしも希望していた据置期間になるとは限りません。

1年を希望していたにも関わらず、事業の状況等によっては、3~6カ月となるケースも少なくありません。

まとめ

据置期間は事業当初の負担を軽減する等のメリットがある一方で、後の返済負担が大きくなるというデメリットがあります。資金繰りに苦労しないためにも、収益化できる時期等をしっかり見極めて設定することが非常に重要です。

 

事業を開始する際は、新規事業の立ち上げ等に精通した弁護士に相談することをお勧めします。資金調達や事業計画の作成等について適切なアドバイスをもらえるでしょう。また弁護士と顧問契約することで、万一資金繰りが悪化した場合等にすぐに相談できるでしょう。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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