借金があっても廃業できます!

会社の終わり方のひとつのかたちが「廃業」です。よく誤解されますが、廃業と倒産は別の手続きになります。廃業は自主的に会社をたたむことを意味し、倒産は支払不能などで会社の継続が難しくなり会社を終わらせることを意味するのです。

年齢や家庭の事情で会社をやめたい。継ぎ手もいないから、会社の整理をして終わらせたい。会社自体は継続できる状況にあるが、継続するつもりがない。このようなときに使われるのが「廃業」です。今回の記事では、廃業時に問題になりがちな「借金」をテーマに解説します。

・借金があっても廃業できるのか?

・廃業すると借金はどうなるのか

・廃業すると経営者に借金返済の義務はあるか

・廃業で借金(返済不能の残債務)を抱えたときの対処法

以上のポイントを弁護士が解説します。

廃業したくても借金(返済不能の残債務)を抱えている。どうする?

このようなときの手引きにしていただければと思います。

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借金があっても会社を廃業できるのか?

会社を設立するときは、設立登記などの一定の手続きを踏んでいるはずです。会社設立時に手続きが必要だったのですから、会社をたたむときも、たたみ方に合った手続きや整理が必要になります。会社を放置したまま「やめました」という経営者の一存で会社をたたむことはできないのです。

会社をたたむ方法には、廃業や倒産などの方法があります。廃業の場合は「これ以上会社の経営を続けるつもりはない」など、自主的に会社をやめる手続きになります。対して倒産は冒頭でもお話ししましたが、支払不能などの「会社を続けることができなくなった」ときに使われる手続きです。自主的と要因からの継続不能。廃業と倒産には、主にこのような違いがあります。

倒産の場合は会社に借金があることが前提です。なぜなら、支払不能など、マイナスが多くて会社を整理するわけですから。そのため、倒産の場合は「借金があっても倒産できる?」という疑問は、まず持たないはずです。対して廃業の場合は「借金があっても自主的に会社をたたむことはできるのか」と疑問を持つ経営者は少なくありません。これについては、どうなのでしょうか。

借金があっても廃業できます。

これが結論です。

借金があれば自主的に会社をたたむことは難しいと勘違いされがちですが、そのようなことはありません。借金があっても廃業することは可能です。

会社を廃業すると借金はどうなるのか?

借金があっても廃業できるとして、多くの経営者が不安を覚えるのは「借金はどうなるのか」ではないでしょうか。

借金を返済せずに廃業した場合、廃業によって会社がなくなります。その場合、「会社の経営者が返済できていない会社の借金(返済不能の残債務)を背負わなければならないのでは?」と不安になることでしょう。廃業時の会社の借金(返済不能の残債務)の行方は、経営者にとって廃業する上での大問題なのです。

会社を廃業したときの借金(返済不能の残債務)の扱いはどうなるのでしょうか。

会社を廃業したときの借金の扱いは2パターン

会社を廃業したときの借金の取り扱いには2パターンあります。

・会社の経営者が背負う借金

・会社の経営者が背負わずに済む借金

会社を廃業した場合、手続きの中で借金の清算が行われます。

次のような事例で想像してみてください。

たとえば、廃業を希望している会社が工場だったとします。廃業時点で工場内には商品や機材などがあり、会社が有している不動産もありました。他社に対して有している債権などもありました。

会社をたたむ際にあらためて会社の資産(プラス)と借金(マイナス)などを計算し、プラスとマイナスを清算して行きます。もちろん、他会社に有している債権なども回収し、プラスとマイナスの清算にあてました。このときにマイナスがなければ、特に問題ありません。経営者が背負う借金なのか、それとも経営者が背負わずに済む借金なのか。借金自体がないわけですから、このような問題は起きません。

問題になるのは、廃業時にプラスとマイナスを計算したら、マイナスの方が勝っていたケースです。廃業に際してマイナスが多い場合は、そのマイナスである借金をどのように扱うかが問題です。

廃業時の借金というマイナスは、もちろん会社の従業員が背負うことはありません。従業員はあくまで会社と雇用契約を結んでいる存在ですから、連帯保証人や保証人などになっていない限りは、借金を背負うことはないのです。会社の廃業により会社を離れる。それだけです。

経営者は従業員のようにはいきません。廃業のときに会社に借金があれば、背負うパターンと背負わずに済むパターンがあります。

会社の経営者が借金(返済不能の残債務)を背負うパターンとは

会社を廃業しても、一部の借金(返済不能の残債務)を背負うことがあります。会社の借金を経営者が個人保証していたパターンです。会社の借金(返済不能の残債務)を個人保証していた場合、個人保証に基づいて経営者へと請求されます。個人保証している借金(返済不能の残債務)が残っていれば、その分については経営者が廃業しても借金(返済不能の残債務)を背負うことになるのです。

なお、個人保証をしていない場合は、会社の借金(返済不能の残債務)を経営者が背負うことはありません。会社と経営者は別物だからです。あくまで個人保証をしている借金(返済不能の残債務)が残れば経営者が廃業しても背負うことになるのです。銀行などの金融機関からの借入は、個人保証がついている最たるものではないでしょうか。

残った会社の借金(返済不能の残債務)すべてを経営者が個人の資産で返済しなければならないわけではありません。この点を勘違いしないようにしてください。

会社の経営者が借金を背負わずに済むパターンとは

廃業時に会社の借金(返済不能の残債務)が残らなかった場合、経営者が借金(返済不能の残債務)を背負うことはありません。借金自体が存在しないのですから、背負いようがないのです。また、借金(返済不能の残債務)が残っていても経営者が個人保証していないものについては、背負うことはありません。

なお、個人事業の場合は事業と事業主が一体になっている関係上、個人が借金(返済不能の残債務)を背負うことになります。今回お話ししている廃業の際の借金の扱いは、あくまで会社の場合です。混同しないように注意が必要になります。

廃業すると経営者に借金返済の義務はあるか

個人保証をしている借金(返済不能の残債務)が残った場合、その借金(返済不能の残債務)については経営者が背負って返済しなければいけません。個人保証していない借金(返済不能の残債務)しかなかった場合や借金(返済不能の残債務)自体が残らなかった場合は、借金(返済不能の残債務)を背負うことはありませんし、返済の義務もありません。

廃業時にプラスとマイナス、個人保証の状況などを確認し、廃業後も経営者が返済義務を負う借金(返済不能の残債務)を背負うかどうかを確認する必要があります。

返済義務のある借金のせいで廃業できない経営者もいる

個人保証は金融機関の融資などでよく使われています。会社の事業拡大や継続する上で金融機関から融資を受ける方法は、よく使われます。そのため、会社を廃業しても金融機関などの借入があれば、個人保証のある借金(返済不能の残債務)が残る可能性が高いといえるのです。

経営者が個人保証している借入(返済不能の残債務)が高額だと、会社の経営者は廃業に二の足を踏みます。なぜなら、会社を廃業してしまうと、収入減を断たれた上に借金(返済不能の残債務)が残るからです。個人資産で返済できるような借金(返済不能の残債務)額や微々たる残債額ならいいのですが、金融機関の融資は高額なケースも少なくないため、「廃業しても返済に困る」という理由から、会社の廃業に踏み切れない経営者は少なくありません。

借金(返済不能の残債務)が残っていても廃業自体は可能ですが、個人保証分の借金(返済不能の残債務)返済への不安から廃業できないのです。中には年齢的に辛かったり、体調が思わしくなかったりしても、借金問題から会社を無理に継続している経営者もいます。

返済義務のある借金(返済不能の残債務)を残して廃業する場合、どのような方法で借金を解決するかが問題です。

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会社の廃業で借金(返済不能の残債務)を抱えたときの対処法

会社の廃業で借金(返済不能の残債務)を抱えてしまう。しかし、会社を廃業したい。会社廃業で借金問題を抱える場合、どのような解決法があるのでしょうか。

解決法は5つあります。

1.経営者が返済する

2.金融機関などと交渉する

3.経営者が自己破産する

4.廃業以外の方法を検討する

5.個人保証を外す

6.返済できる範囲で返済し残債務は相続時に相続放棄

6つの方法を順番に見て行きましょう。

経営者が返済する

経営者が背負った借金(返済不能の残債務)を返済する方法です。非常にシンプルでわかりやすい解決方法になります。

会社の経営状況は、廃業しようとしている会社によって様々です。中には「個人保証している借金(返済不能の残債務)もあるが、もう少しで返済できる」「借金(返済不能の残債務)自体が少ない」という会社もあります。実際、会社廃業時の債務状況を見てみると、会社によってかなり差があることがわかります。

廃業を検討している時点で会社の債務や個人保証の状況を確認する。会社経営者が個人保証している借金額が経営者の資産で返済しても問題ない額なら、そのまま廃業して返済するという解決策も十分あり得ます。

金融機関などと交渉する

会社を廃業し、経営者が借金(返済不能の残債務)を背負う。この返済義務のある借金(返済不能の残債務)について、金融機関などと返済の交渉を行う方法です。

たとえば、会社を廃業し、個人保証している借金(返済不能の残債務)が残ったとします。この借金(返済不能の残債務)の額は、経営者が一括で支払うには苦しい額でした。経営者は金融機関に返済が苦しい旨相談し、分割払いに応じてもらいました。・・・これがこの交渉で解決する方法です。つまり、交渉の上で、借金(返済不能の残債務)を分割払いで返済する方法になります。

保証協会に代位弁済が行われた場合も、交渉することが可能です。保証協会はすでに代位弁済しているわけですから、債務者(経営者)が一括で全部払うことが難しい状況だと理解しています。分割払いの交渉をすることで、分割払いに応じてもらえる可能性があるのです。

金融機関などへの交渉は「今後も分割払いで払える資力がある」「分割払いで払える収入がある」ことが基本的な条件です。分割払いで払える資力や収入、可能性がない(要するに収入も資産もない)場合は交渉の余地はありません。他の解決策を検討する必要があります。

経営者が自己破産する

経営者が自己破産することも解決策のひとつです。自己破産とは、裁判所に申し立てて借金(返済不能の残債務)の免責を受ける手続きになります。会社を廃業して、返済義務のある借金(返済不能の残債務)が残る。返済できる資力も収入もなく、返済の目途が立たない。このようなケースでは、会社の廃業とスケジュールを合わせて自己破産で解決する方法が考えられます。

経営者が自己破産することにより、返済義務のある借金(返済不能の残債務)は免責されます。ただし、借金(返済不能の残債務)の中には免責されないものもあることや、価値のある財産が処分されてしまうことが自己破産のネックです。財産隠しや一部の債務者への弁済があった場合は免責を受けられない可能性があります。

廃業の際に借金(返済不能の残債務)が残って払い切れない。このような場合は、廃業前に弁護士に相談して、借金(返済不能の残債務)の整理や自己破産をする上でやってはいけないことなどのアドバイスを受けながら手続きを進めることをおすすめします。

廃業以外の方法を検討する

会社を廃業する以外の方法を検討するという方法もあります。

たとえば、会社を廃業せず、会社を買ってくれる企業を探す方法があります。いわゆるM&Aです。

M&Aには会社のノウハウや人材を受け継いでもらえる方法もあるため、「廃業によって社員や業界のノウハウが失われるのはもったいない」と考える経営者も検討したい方法です。会社を売却することによって経営者にお金が入れば、会社廃業後のリタイアメント生活の資金捻出にも役立ちます。

M&Aで解決する際は、借金(返済不能の残債務)も問題になります。金融機関などの交渉する必要も出てくるのです。また、会社を買ってくれる企業などを探すことが課題になります。廃業手続きや借金(返済不能の残債務)の返済見通し、会社についての今後の希望などを考慮した上で検討するといいでしょう。

個人保証を外す

「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。会社経営者の個人保証について見なおそうという動きです。以下、ガイドラインの内容について引用します。

(1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと

(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて約100~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること

(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること

引用 : 経営者保証に関するガイドライン

これはあくまでガイドラインであり、強制ではありません。しかし、ガイドラインに則って個人保証を行わずに融資したケースや、既存契約・期間延長などに際して個人保証を外せたケースが実際に出てきています。交渉や会社の状況によっては個人保証について交渉の余地があるということです。

返済できる範囲で返済し残債務は相続時に相続放棄

その他、借金(返済不能の残債務)については、返済できる範囲でのみ返済し、残債務はそのままとし、残債務は、相続時に、相続人に相続放棄してもらうという方法もあります。

若い経営者であればまだしも、高齢の経営者の場合、年金などで生活することはできるわけですので、借金(返済不能の残債務)を無理に返済するのではなく、返済できるもののみを返済し、その過程でめぼしい財産は換金し返済に回す必要があると思われますのが、借金(返済不能の残債務)については、払えないものは払えないのですから、金融機関としても取り立てようがないわけですので、そのままとならざるを得ませんし(毎月一定額を支払うように言われることはままあるかと思いますが)、自己破産すると権利関係がすっきりしますが、破産者となってしまいますし、取り立てられるようなものがなければ取り立てられませんので、ひとまずそのままとし、将来的に経営者が亡くなり、相続人が借金(返済不能の残債務)を相続してしまわないよう、相続人においてしっかり相続放棄してもらうことにより、借金(返済不能の残債務)もなくなってしまうということとなりますので、無理はせずこのように対応している経営者も多く見受けられます。

最後に

借金(返済不能の残債務)があると会社の廃業ができないのではないかと勘違いする経営者がいます。

借金(返済不能の残債務)があっても廃業は可能です。

ただし、廃業後に返済義務のある借金(返済不能の残債務)を経営者が背負う場合は、借金(返済不能の残債務)をどのように解決するかが問題になります。廃業の段階で経営者の借金(返済不能の残債務)問題解決のための計画を立てて、廃業と足並みをそろえて進めることが重要です。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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